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群青に染まった世界の中にどこからともなく漂ってきた彼は、純白のハトのことを知っていた。ウイング・ビルズから飛んできたということまで。
夢の中のみならず、現実世界でも私の前に姿を現したのは何故だろうか。いや、そもそも何故夢に入り込めたのだろう。
何一つとして解決しない謎は留まることも、消えることも知らない。大きさと蒼さを増していき、目の前で揺らめいている。
もう考えるのをやめることはなかった。ありとあらゆる理論を展開して因数分解して幾通りもの結論を空間に浮かべていく。
どれが正解に近いだろうか。
ころころと変わる彼の表情のひとつひとつを思い出す。表情から「読み取る」のではない、「感じ取る」。
その全てから取り出した何かを元に、空間に散らばった理論をかき集めて組み立てる。全てを駆使して作り出した私の最終結論を眺める。
現在、これ以上の理論展開は不可能。情報が少なすぎる。
次に会うのはいつになるのだろうか。きっと、そうすぐには会えないだろうな、と目を閉じる。
存在自体が最大の謎の生命、幻想少年は白天と親しげだった。後で訊くか、と思考を止めて意識を手放した。
頬に何かに叩かれる感覚を覚えて目を覚ます。
小さいそれに、目を擦る。頬から白天が離れたことを確認して身体を起こした。なにも言わない彼に、心のなかで首をかしげる。いつもなら、そんな時間は無いのだからと急かしてくるはずだ。立ち上がって伸びをする。口を開くか迷っていると、先に空気を震わせたのは白天だった。
「ソアが今すぐ聖水の間に集まるようにって」
「聖水の間――うん、すぐ行く。……のはいいんですけど、ソアって誰ですか」
歩き出しながら会話を続行する。相変わらずよく分からない単語を使って説明をしないままの白天に呆れて口にした。へっ、はっ、と謎の声を発してからその答えが返される。
「寮長、染川葵だからソアって呼んでて……ごめん、言ってなかったね」
「えーと、他にあだ名で呼んでるのは――」
「基本的にあだ名だから……君が関わった人だけ言っていくようにするよ。ちなみに、神無月はナツキだよ」
頭を垂れて飛ぶ白天を横目に見ながら聖水の間の扉を開いて急ぐ。すでに半数以上が集まっていた。何故こういうときに限って急かさないのかと白天に小言を言いながら、神無月の横に腰を下ろした。
5分後、全員集まったのだろう、寮長が口を開いた。
この学校における戦争の存在は知っているかと。
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作者名:天川凛廻 | 作成日時:2017年12月24日 20時