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2章-1 ページ11

すきま風に吹かれる白銀の髪を見ながら本当に目的地に到着するのかと心配をしていた。話しかけようにも相手はハトしかいないのだ。肝心なときに限って不在もしくは睡眠中の白天は冷たいすきま風に吹かれ続けても起きる様子はない。
ふと、外を見れば白っぽい青と黒っぽい緑だけが広がっている。黒の面積は少なく、嫌がらせが好きな日光も姿を見せるつもりはないらしい。すでに午後2時をまわっていた。あと1時間程度で着くのだろうか。そんなことを考えながら外に目を遣ったとき、世界が群青に染まった。それは一瞬の出来事だった。何かがふわふわとこちらへ漂ってきていた。鳥の羽だろうか――否、人間だ。正確に言うと、魔妖界に存在する類いの輩だろう。
眺めていると、生命体はこの車窓へと向かってくる。あれは――

「やあ君、また会ったね」

「夢の中の……幻想少年」

「ははっ、何それ。また白天は寝てるんだね」

「えぇ、まぁ、そうですね」

息をついて、少年は白天を揺さぶり始めた。どうやら白天に用事があるらしい。知り合いなのだろうか。寝ているからと言ってそっとしておくことはせず、起きるまで起こし続けるようだった。

「むぅ……多分まだ着かないはずだからほっといてよ――」

「いーや、無理だね。僕が来たからには、何としてでも起きてもらうよ」

「はっ、なんで居るのさ。昼間は日光が当たるから出ないんじゃなかったの?」

「いや、本当は出たくなかったんだよ?それがね、急用ができちゃって……君にね」

最後の言葉が放たれた瞬間に白天は隠そうともせずに嫌な顔をした。それを見てもニコニコと笑みを浮かべる少年は中に入り込んでから口を開いた。

「ほら、やっぱりいた。ウイング・ビルズから飛んできた白いハト。こいつのことだけど、君たちのところで預かっといてくれないかい?もちろん、害が及ばないようにするからさ」

「君たちって――学校のことかね?」

その質問は予想外だったのか、うーんと唸りながら考え込み始めた。てっきり、「君たち」とはどこのことか決まっているものだと思っていたが、どうやら違っていたらしい。コロコロ表情は変わるものの、どの顔からも考えが少しも読み取れない。

「いや、学校じゃなくて君たち二人のところで」

「僕はかまわないけど……それは彼女に訊くべきだと思うよ」

「そうだね、その通りだ。君――たしか水月と言ったかな――はどう?」

「えっ、あ、えっと……だ、大丈夫……です」

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作者名:天川凛廻 | 作成日時:2017年12月24日 20時

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