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「あれ」


視界に映ったのは昨日私達が寝泊まりした部屋の扉。

つい先程まで楽しくご飯を食べていた筈。
どうして部屋に押し込まれているのか分からない。


もしかして再び記憶が飛んでいる?


「オマエまたぼけーっとしてたんだゾ」
「何してたんだっけ?」


そう尋ねると彼らは顔を顰めた。二度目だ。

「防衛魔法の特訓してたの覚えてませんか?」
「あ、そうだった」

いきなりアジーム君の様子が豹変して、庭に出されたんだ。

引かれた腕がちょっぴり痛かったの覚えてる。

「どうして直ぐ忘れちゃうんだろう」

確かに覚える事は苦手。

でも、だからってこんな短期記憶は今までに無い。

自分の身に何が起きているのかもよく分からず、とても混乱している。


「ジャミル先輩と何か話してませんでしたか?」
「え、そうなの?」


まだ全部思い出せてない部分があるみたい。

ユウ君は私と彼が一緒に居たと言うけれど、全然覚えてないのだ。


腕が痛かったなっていうぼんやりとした事しか。


此処へ連れてきた寮生達が帰りたいと嘆く。

扉越しで、しかもそんな近い距離感ではない。

なのにそれが私の耳にまで入り、少しだけ胸が痛んだ。


気持ちがとっても分かるから。


私も帰りたい。帰りたかった。

お父さんとお母さんと一緒に年を越したかった。

けれどそれは叶わず、奇妙な出来事に巻き込まれて。


「このスプーンで少しずつ床を掘って外に出るんだゾ!」


学園長は頼りにならないからと必死に考えてくれたらしいグリム君。

頭脳明晰にしては根性がものを言う解決策に思わず吹き出す。

それを見たユウ君が、良かったと小さく漏らした。

眉間に人差し指を当てながら。

どうやらまた怖い顔してたみたい。


「床ってそんな簡単に削れるの?」


私の質問にユウ君も首を傾げた。

よく分からないけれど特殊な造りだって事にしておこう。


交代で掘り進めて見張りが来たら寝た振りをする。

それを何度か繰り返し、グリム君の腕が通る程の大きさにまで達する頃にはお日様が顔を出していた。


が、途中で寝こけてしまいました。ごめんなさい。


ユウ君は大丈夫だと言ってくれたがグリム君は案の定ぷりぷりしてる。本当にごめんね。


今日も朝から元気にオアシスまで行進するらしくて膝から崩れ落ちた。

またあの地獄がやって来るのだから致し方無い。

怒られるのは嫌なので素早く身支度をしてみんなの元へ急ぐ。


アジーム君は変わらず怖いままで、悲しくなった。

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りん(プロフ) - ふわなさん» ありがとうございま😭劇遅亀更新野郎ですが、頑張ります!!!! (2021年11月16日 21時) (レス) id: 0e75b6d63c (このIDを非表示/違反報告)
ふわな - とっても面白い作品ですねヾ(≧▽≦*)o更新楽しみにしております! (2021年11月16日 13時) (レス) @page34 id: 7054f2498a (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - 雪さん» ありがとうございます!!!!わかりにくかったかなーと思ってたので、嫉妬してるところ伝わって嬉しいです😂 (2021年11月13日 20時) (レス) id: 0e75b6d63c (このIDを非表示/違反報告)
- 更新楽しみに待ってます(●´▽`●)リドルくんの嫉妬とか可愛いです(●´▽`●) (2021年11月12日 22時) (レス) id: ed2686deb5 (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - 花束さん» ああああああ!お返事遅くなって申し訳ないです!ありがとうございます😭😭そう言ってもらえて凄く嬉しいです!更新、暫しお待ちを!! (2021年10月15日 21時) (レス) id: 35357c875d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:りん | 作成日時:2021年7月15日 18時

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