5話 ページ14
『手紙とかも、その、ありがたいけど…』
歩く足を止めずに、Aは便箋の入った封筒に書かれている送り主の名前を一枚ずつ見ていった。それを横から覗き見ていた蘭は、明らかに男よりも女の名前のほうが多いことに気づき、つい半目になる。Aは女の子からもモテるのだ。
ふと、Aが突然最後の手紙を見てピタリと足を止めた。
「…A?どうし…」
不思議に思った蘭と新一が振り返ったのも束の間。瞬間、彼女は勢いよくそれらを全てカバンの中へと突っ込んだ。
「どーした?」
『な、何でもない。知ってる人の名前があったからちょっと驚いただけ!』
気にしないで、と笑って再び歩き始めたAは、納得いってない表情をした二人の背中を無理矢理押した。そして素早く別の話題に切り替える。
『あっ、ところでさぁ新一、明日の約束忘れてないよね?』
「え、明日?………何かあったっけ?」
わざとらしくすっとぼける新一に蘭が激怒する。明日は蘭が空手の大会で優勝したことを祝い、三人でトロピカルランドに遊びに行く予定なのだ。蘭は新一に何度も素早い蹴りを食らわせたが、彼はそれを慣れたことのようにサッとかわした。Aはその時に蘭のスカートの中をチラ見した新一を見逃さなかった。
だがしかし、彼女は今それどころでは無い。
先程見間違いでなければ確かにファンレターに紛れて入っていた厚紙のカード。右下には彼を表すトレードマークが描かれていたのだ。
シルクハットを被った道化師が陽気に笑うあのマークが………____
『………、』
「……ねぇっ、聞いてる?……A!!」
『っ!あ、ゴメンゴメン…何?』
顎に手を当てて考えこんでいたAは、蘭が自分を呼ぶ声で我に帰った。考えると周りのことに疎くなってしまうのが彼女の悪い癖だ。
「もー、大丈夫?Aも約束忘れてないでしょうね?!」
『も、勿論覚えてるって!明日、10時にトロピカルランド!』
「分かってるならいいけど……。寝坊して遅刻したりしないでよ?」
『はいはい、蘭こそお腹出して寝て風邪引かないよーにね』
「なっ、そんなことしてないわよ!!!」
馬鹿!と顔を赤く染めた蘭にAは可愛いなぁ、と心の中で呟いた。そして曲がり角に着いたところで二人に振り返る。
それはいつも二人と別れて自分の家への帰路に行く角だった。
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mリン(プロフ) - 宵夜さん» こんにちは、コメントとご指摘ありがとうございます!修正が上手く行ってなかったようです。教えてくださりありがとうございました。また何かありましたらコメント宜しくお願いいたします! (2022年3月20日 16時) (レス) id: 535fdf8baa (このIDを非表示/違反報告)
宵夜(プロフ) - とても面白くて良かったです!少し質問なんですが、ページ14の『(小さくなったあなたの仮名)』って目次ページで設定したものですか?変換されていないようでしたので一応報告と思い…不快であれば消して頂いても構いません。 (2022年3月11日 0時) (レス) @page14 id: 5d45bacd52 (このIDを非表示/違反報告)
mリン(プロフ) - マナさん» 久しぶりにきたのでご返信が遅くなってしまい申し訳ありません。数年前の私が作成した拙い内容ですがそれでも宜しければどうぞ使ってやってください…!わざわざコメントありがとうございます! (2022年2月20日 14時) (レス) id: 535fdf8baa (このIDを非表示/違反報告)
マナ - 私なりに作品を参考させてもらっていいですか? (2022年1月30日 8時) (レス) @page1 id: 25d45421cb (このIDを非表示/違反報告)
mリン(プロフ) - まゆさん» コメントありがとうございます!映画沿いもありますので是非ご覧ください。 (2019年5月22日 7時) (レス) id: 148773b33b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:mリン | 作成日時:2017年4月21日 21時