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放課後部活に行こうと、机の中の教材をカバンに押し込んでいると、ノートがないことに気づいた。
「え、うそ、どこやったっけ」
机の中にも無くて、カバンを漁っても出てこない。
普通に大事なもんやのに。
どこかで誰かがクスクスと私を笑っているような気がした。
とにかく探して早く部活に行こう。
隠されたとしたらまずは教室のゴミ箱だろうか、と覗くも無い。
教卓の中や、教室でありそうな所は探したが見つからなかった。
「も、なんでよ……」
カバンを持って廊下を走った。
走りながら泣きそうになった。
何で、何で私がこんなことされなあかんの。
強豪である稲荷崎でマネージャーするんやったら、それなりに覚悟せなあかんな、て思って邪魔な髪は切ったし、遊ぶ暇もなく他の選手と同じように部活に打ち込んできたのに。
その仕打ちがこれなん。
そんなん酷すぎるわ。
今まで気付かないふりをしてきた感情がとめどなく溢れる。
全然、耐えられてなかった。
私は自分が思うよりずっと弱いみたいだ。
半ば諦めながら探し続けて、やっと見つけたのは、女子トイレのゴミ箱に捨てられたノートだった。
「……っ、最っ悪や」
表紙に『今すぐマネージャー辞めろ』と書かれた付箋が貼られていた。
ホコリにまみれて薄汚れたノートを手にして、私の中で何かがプツンと音を立てて切れた。
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その日初めて部活を休んだ。
監督に休ませてください、って言いに行ったら
「ゆっくり休みや」て言ってくれはった。
北には合わせる顔がなくて、たまたま部室から出てきた赤木に言うた。
「南、大丈夫か」
「ごめんなぁ。明日からまたちゃんとするから」
精一杯明るく努めたけれど、笑えていた自信はない。
校庭をとぼとぼと歩いていると、楽しかった頃が浮かんでは消えて、虚しくなった。
弱い自分が悔しい。
わたしはどうやったって北みたいにはなれない。
北は色んな人に好かれてて、私なんかが北の近くにいたらいけない。
マネージャーとしての、先輩としての、それからただの女子生徒としての、色んな感情がぐちゃぐちゃになって、涙が溢れた。
帰り道にある、よく北と尾白と立ち寄った公園のベンチに腰掛けた。
今年に入ってからこんなことばっかりや。
去年は良かったなあ。
あの頃は、もっと楽しいことだけやった。
北との思い出ばかりが次から次へと蘇ってきた。
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なず@ヴィル様の旦那です(プロフ) - うびゃぁ…………今まで読んできた中で一番好きです… (2021年4月10日 16時) (レス) id: c2e37a127a (このIDを非表示/違反報告)
依(プロフ) - ちびさん» そう言ってもらえると嬉しいです^^お読みいただきコメントまで、本当にありがとうございます! (2020年6月5日 22時) (レス) id: 1c396819ac (このIDを非表示/違反報告)
ちび(プロフ) - めっちゃ感動しました!!最高です( ; ; ) (2020年6月2日 20時) (レス) id: c0c643d2d0 (このIDを非表示/違反報告)
Rikka(プロフ) - りるとさん» そう言っていただけて嬉しいです!ありがとうございます^^ (2020年4月17日 8時) (レス) id: 1c396819ac (このIDを非表示/違反報告)
りると - めちゃくちゃいい話でした!! (2020年4月15日 0時) (レス) id: 615da3bcde (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Rikka | 作成日時:2020年3月18日 10時