治らないなんて希望を捨てないで【小説】

診察の時間　アビー ページ49

「…栗栖野？」

「うん。知らない？」


現在、私アビーは人探し。

勿論アリスくんのことだよ。

「今日診察だからね〜」って念押しした気がするけどな…。

今は昌くんにアリスくんの所在を聞き込みしてます！

そう、なんだけど…


「見てない、ですね。」

「うーん…そっかぁ。」


全然見当たらない。

他の人にも聞いたんだけど、誰もがNoと答えるんだよね。


「他は当たったんですか？」

「当たったんだけど…皆居ないって。」

「む…」


キュッと目を細める。

考えてくれてるのかな?


「…………………のでは、」

「あ、ごめん聞こえなかった。」

「まだ寝てる…とかじゃ、」

「…Oh!」


なるほど、その手があったか。

流石昌くん…賢い…


「ありがと！ちょっと行ってみる！」

「…ん。」


ふいっ、とそっぽを向いて昌くんはどこかへ歩き出す。

…可愛いなぁ。

思わずクスッとわらってアリスくんの部屋へと向かった。


***


「…アリスくーん？」


ｷｲｨｲｯ


ドアの軋む音が静かに響く。

直ぐに変な臭いが私の鼻に入ってきた。


「っ、埃臭いわn「くしゅんっ」…ん？」


くしゃみの音がした。

他でもならぬ、アリスくんの声。


「ん〜、今何時だろ…」


あ。

もしかして今起きた？


「…10時位かな。」

「わっ、アビーお姉ちゃん！」

「おはよ〜。診察行こっか？」

「うん、じゃa…くしゅんっ」


思わず笑う。

ぬいぐるみ、後で干してあげなくちゃな。

そう思いながら私は部屋の窓を開けた。

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