特効薬は君の笑顔 ページ14
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「うわ、っと」
黒い背中に抱きつけば、ひんやりと冷たい…というか温度がない。まあそりゃそうだ、幽霊だし。
その本人はどうしたの、なんて私の頭を撫でる。その優しさに甘えぐりぐりと背中に顔を埋めればなになに、とケラケラ笑う。
嫌なことがあった。
喧嘩している友達がいて、その子と仲良い別の子に無視されたのだ。まあなんというか、ズキっとした。そりゃあ気まずい関係ではあったけど、まさか無視されるとは。
それで無性に花子くんに会いたくなって、休み時間だけどここまで来たというわけだ。
「珍しいね、放課後以外に来るの」
「ん…」
「?…サボる?」
ギュッと、力をいれた。
いつもはこれくらいじゃへこたれない。でもなんだか疲れてしまった。それが積み重なって、しんどくなってるだけ。
まだ大丈夫だと自分に言い聞かせるのは、きっと良いことではないのかもしれない。でもまだ頑張れるから。だから。
「サボんない、頑張る、から…花子くんだけは私に偉いって言って、お願い」
「…Aは偉いよ。頑張ってる。よしよし」
ぽんぽんと頭を撫でられ、涙が滲んだ。
離れたくない、ずっとここにいたい。でもそうしたら、きっと私は後悔する。ダメになる。
甘えるだけじゃなくて、私自身がどうにかしないといけないのだ。
そっと、花子くんから離れる。
「…よし。白杖代」
白杖代はふよふよとクラゲのように浮遊し、こちらの傍に寄る。つん、とつつくがへこみもしない。
貸してくれる、ということだろうか。
「俺のAはいい子だから友達を傷つけられないだろ?その時は白杖代で俺を呼んで」
そう言うとちゅ、とかわいく音を響かせ、私の頬にキスをする。そしてとびきりの甘い笑顔で、私に微笑む。
「おまじない。
…放課後までは頑張って、ね?」
「…ん」
もう、大丈夫。
白杖代に優しく触れ、トイレを後にする。
さっきこぼした涙はもう拭った。
さっきの傷も、もう大丈夫。
次は仲直りをして、ぐちゃぐちゃの顔なんか忘れるくらいの笑顔で花子くんに会うんだから!
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蓮 - まめさん» ありがとうございます。好きと言ってもらえて嬉しいです。ミッドナイトは実は私も気に入ってるので嬉しいです。笑 引き続きよろしくお願い致します。 (2020年2月12日 0時) (レス) id: 85c52fd00e (このIDを非表示/違反報告)
まめ(プロフ) - 初コメ失礼します! ほんとにこの作品すこです、、ミッドナイト・メランコリックがほんとにすここです!更新頑張って下さい! (2020年2月8日 21時) (レス) id: a5d55e68a9 (このIDを非表示/違反報告)
蓮 - みどりさん» 好きと言ってくださっただけでもとても嬉しいです。引き続きよろしくお願い致します。 (2020年1月30日 11時) (レス) id: 85c52fd00e (このIDを非表示/違反報告)
蓮 - すばるさん» 神秘的…初めて言われました。とても嬉しいです。引き続きよろしくお願い致します。 (2020年1月30日 11時) (レス) id: 85c52fd00e (このIDを非表示/違反報告)
みどり - やだ好き(´∀`*)ポッ←簡潔にまとめました( ー`дー´)キリッ(簡潔にまとめすぎた) (2020年1月29日 22時) (レス) id: ae6be26781 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:蓮 | 作成日時:2020年1月24日 19時