花憑きよ、舞え【鬼滅の刃】

5: 不思議な男 ページ7

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雲一つない

それは綺麗で静かな夜だった

こんな日は、決まってお医者の先生が現れる

夜にしか訪れない、色白の不思議な男が

「こんばんは。Aさん」

A「…！こんばんは、先生」

この日も、音もなく窓からひょっこりと男は顔を出した

少女は一瞬驚くも、慣れたように挨拶をかえす

A「あの、今夜はいかがなされましたか？」

「ああ、なに。患者の容態が気になってね。後、君に頼みがあって」

A「…そうですか。あの、先生、」

「なにかな？」

A「いえ、あの…日中はやはり医学の研究で忙しいのですか？」

いつも夜にしかお会い出来ないので…

そう問うと一瞬ピクリと眉をあげ、次に意味ありげな笑みを男は浮かべた

「あぁ。すまないね、日中はついつい研究に没頭しすぎてしまうんだ」

A「…そうですか。不躾な質問をしました。申し訳ありません、先生」

「いや、なに。気にしないでくれ」

A「ありがとうございます。…ところで先生、本日の用事とは？」

そう問うと男は懐から薬瓶を取り出した

A「…？」

「君の血を分けて欲しくてね」

A「血を？」

訝しげに薬瓶を見る少女に男は弁解するように説明を継ぎ足す

「研究の一環としてだよ。大方の花鬼の者にも協力して貰ったから、後は君と外出している数名だけでね？」

にっこり、有無を言わさない笑みを浮かべるその男に少し違和感を覚えた

A「その研究とは、先生がお作りになった薬の副作用云うなるものを消すものですか？」

「…そうだよ。だから、協力してくれるかな？」

こくり、とその言葉に頷くも少女はなんだか不安を覚えた

血で研究…？

そのような記述を本でも見た事がない

そう思いながらも、善意でやってくれる人を疑うのは良くないと考え、家に上げる事にした

A「先生、では中へお入り下さい」

そう言うと、男は首を横に振る

「いや、いい。…藤の花の匂いがするからね」

玄関先でお願いするよ

そう云う先生

…珍しい、花の匂いが苦手とは

そう思いながらも、玄関口に先生を案内する

A「先生にも苦手なものがあったとは驚きでございます」

「ああ、アレだけは駄目でね。鼻がおかしくなる」

男が本当に心底嫌そうな顔をするものだから、笑ってしまった

A「ふふ、お珍しい。では次回、先生がいらっしゃった時には別の香を用意しておく事にします」

「あぁ、頼むよ」

和かな会話を進めながら、男は注射針を少女の腕に刺した

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