誰かのために【TOKYO MER】 (ページ4)

今日:1 hit、昨日:5 hit、合計:7,306 hit

3 ページ4

パチパチパチパチ

『人多すぎでしょ…。』

こんなに人いるとか聞いてないし…。

音羽side
「相変わらずこういうパフォーマンスだけは上手いよなぁ。赤塚梓都知事大先生は。」

式典に行かずに久我山局長に呼ばれてきたというのに、爪とぎかよ…。

「チームをまとめるチーフドクターは喜多見幸太医師です。」

「聞いたことないけど。使えんのこいつ？」
『国際医療組織で紛争地域を転々としていたみたいです。僻地では得意でしょうけど日本でどこまでやれるか。』
「目立った実績はないし、ネームバリューはゼロ。赤塚知事の大号令で決まった一大プロジェクトの割にはしょぼいリーダーだよな。」
『政治パフォーマンスの道具には誰もなりたくないですからね。国内の有名医師に断られて、仕方なくそれっぽい医師を海外から連れてきたってところではないでしょうか。』

玲奈side
「TOKYO MERは、都知事直轄の医療組織です。彼らの使命はただ、一つ。それは彼らが駆け付けた現場で死者を一人も出さないことです。」

「死者ゼロって…。無理でしょ。」

隣で比奈先生が呟いた。都知事の方を見るとなんだか喜多見チーフと目を合わせて微笑んでいる。まるで、「あなたならできるでしょ」って言ってるみたい。
どんな関係…？てか、死者ゼロって本気で言ってるの…？

ビービービー

その場の空気が変わった。

「都庁危機管理対策室から伝達。港区芝浦5丁目、バスとトラックによる衝突事故発生。損傷が激しく、車内に多くの負傷者が取り残されている模様。中規模医療事案と認定。TOKYO MERの出動を要請する。」

喜多見チーフが走って運転席のドアを開けに行く。そして、

「MER了解。出動します。」

そう言った。その言葉を聞いた瞬間、MERのメンバーが動き始めた。私もなんとなく察し、TO1の後方に移動する。ふと振り返ると隣にいた比奈先生は一人その場でおろおろしている。

「比奈先生も急いで。」
「え！？いきなりですか！？」

喜多見チーフが声をかけた。比奈先生が困惑しながらこちらへやってくる。

「閉めますよ。」
「待ってください！」

何とか比奈先生が乗り込み喜多見チーフがドアを閉めた。それと同時にTO1はサイレンを鳴らしながら走り出した。

音羽side
「死者ゼロとは、大きく出たねぇ。お手並み拝見と行こうか。」

久我山局長の言葉を聞きながら俺はTVの画面をじっと見つめていた。