標的71 どっちものせい−２ ページ34
麗羅視点
山本君が立ち上がる。
ベッドに座り直すと、ごつごつした大きな手であたしの頭をわしゃわしゃと撫で回した。
いきなりの事で混乱したが、何時もより その行為に安心して、大人しく撫でられておく。
山本君は八の字の眉をして、ふるふると首を横に振った。
｢迷惑なんて思ってねーよ。
むしろ俺が悪かったって思ってる位だ｣
｢どうして？ 山本君は何も悪く無いよ｣
｢麗羅がナハトと戦ってた時に俺は唯見てるだけだったし、ナイト……あ、ナハトの双子らしいんだけどさ……の攻撃も、防いでやれなかった｣
｢それは何方もあたしの自業自得じゃない？
一人で戦うって言って逃げられちゃったし、後ろから襲われたのは完全にあたしの不注意だもん｣
｢でもさ、ナハトの変なフィールドに一緒に入っていたら、違ったかもしんねーだろ？
そもそも俺が気絶してなかったら麗羅が彼処に留まる必要は無かったから、ナイトに襲われる事も無かったしさ｣
｢どうだろー。
もう身体が限界だったし、山本君がいなかったら大変だったかも｣
｢そんな事ねーって。
俺、本当に情けねぇ。
黒曜ランド入ってすぐにさ、『俺が守るって決めたんだ』って言っただろ。
それなのに、結局麗羅に助けられちまったし……｣
「そんな事無いよ」と言ってから、笑いが込み上げて来た。
くすくすと声を抑えて笑う あたしを、首を傾げて見つめる山本君に「ごめんね」と謝る。
さっきから互いが互いを慰め、「自分のせい」だと言い合っているだけである。
そんな終わりの見えない会話が、何だか可笑しく思えてしまったのだ。
そう伝えると、山本君も「確かにそうだな」と顔を綻ばせた。
｢来週な、試合があるんだ。
俺も出るんだぜ｣
｢？ そうなんだー。応援するね！｣
｢サンキューな！
でさ、それまでに退院出来たら、見に来てくれねーか？
麗羅が見てくれたら俺、絶対勝てると思うんだ｣
以前、獄寺君にも同じような事を言われた事がある。
あたしは勝利の女神でも何でも無いし、二人共あたしに関係無く頑張っているし強いと思うのだけど。
それでも、きっと本人達はそう思っていないのだろう。
強気な笑顔を向けて、そう言って来るのである。
｢分かった。頑張って早く治すから、山本君も絶対に勝ってね！｣
「おう！」山本君は今日一番の声で頷いて、にかっと元気な笑みを見せた。
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作者名：レイチェル | 作成日時：2018年10月19日 17時
