標的66 大切なもの−３ ページ23
麗羅視点
凭れていた壁にも炎が燃え移って、ボクは仕方が無く内側へと転がる。
四方八方、何処を見ても赤い炎。
触れていなくても身体が焼けるように熱く、息苦しい。
ナハトがいなくなってから少し痺れが治まったが、相変わらず身体の動きは鈍いし脱出する方法は既に無い。
ボクはこのまま青々とした大空を、皆の笑顔を見る事無く灰と化すのだろう。
ナハトには逃げられてしまったから、完全なる無駄死にだ。
(ボク、一体何をやってるんだか)
《全くだ。後悔している暇があったら、さっさと此処から逃げ出せ》
(逃げ出せって、どうやって？)
《獄寺と初めて会った日と同じように、念を込めて棍を突くんだ》
(無理だよ。ボク、身体が動かない)
《こんな所で死なせる為に、オレはお前を此処に来させたんじゃ無い。
分かったらさっさと死ぬ気で立て！》
珍しくローシさんが怒鳴った。
身体が無いから痙攣をしないんだ。
でも、ローシさんの言う通りだ。
死んでも良いかと思い掛けていたが、ボクは死ぬ為に来たのでは無い。
ふわっとして感覚が超絶鈍っているせいで何度も身体が倒れそうになるのを根性で耐え、棍に凭れるように立ち上がった。
ごおごお、と燃え盛る炎の中で神経を研ぎ澄ます。
雪の死ぬ気の炎を手に灯すイメージをし、最後の力を振り絞って大きく振り被った棍で力強く地面を突く。
すると死ぬ気の炎が湧き上がる感覚がしたのと同時に、袋に入っているおしゃぶりが神々しい光を放つ。
棍先から凍てつく冷気が強い冷風を起こし、ドーム一帯を覆っていた炎が一瞬にして消えた。
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作者名：レイチェル | 作成日時：2018年10月19日 17時
