標的60 血の臭い−２ ページ2
麗羅視点
｢二人共、大丈夫〜！？｣
｢ああ、ボクは大丈夫。
打ち所が良かったのかも｣
屋根の上から見下ろして来る主君に、ボクは大きく手を振りながら首を傾げた。
結構な高さから落ちたにしては、何処も打ち身していない。
ボクが自分の身体を確認していると下から山本の唸り声がして、慌ててその場を退いた。
すると、「ふはぁ」山本は大きく深呼吸をして上半身を起き上がらせた。
どうやら、ボクの下敷きになっていたようだ。
｢ごめん、山本。怪我してないか？｣
｢良いって良いって。
気にすんな、何処も怪我してねーから。
それより、お前こそ右手は大丈夫なのか。血ぃ出てるぞ｣
深刻な顔をした山本がボクの右手を取る。
其処で初めて、ボクは右手の平が切り傷と暗褐色の生き血にまみれている事を感知した。
自覚した途端、刺すような鋭い痛みに襲われて右手を抑えた。
あまりの痛さに、強く唇を噛む。
「俺のせいだな」山本が眉間に皺を寄せた。
それからボクの右手首を強く握って、顔の位置までボクの右手を上げた。
圧迫止血法だ。
落ち込む山本を元気づけようと口を開いた時、右側から殺気を感じた。
ボク達は其方を睨み付ける。
そうだ、もう敵のテリトリーの内だ。
｢何時まで喋ってんの？
……まあ、良いや。
歓迎すんよ、山本武とちっこいの。
わざわざ俺の獲物がいらっしゃったんだもんな｣
暗闇の中から現れたのは、黒曜中の制服を着た金髪の男だった。
顔を横断する程の大きな傷を持った その男は、六道骸の従者の一人……城島犬だ。
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作者名：レイチェル | 作成日時：2018年10月19日 17時
