標的55 襲撃−１ ページ20
麗羅視点
｢ムエタイ、剣道、空手、レスリング。
凄いチラシの量だねー｣
｢本当だよ。俺には必要無いってのに｣
両手いっぱいに習い事のチラシを持ったツナ君が、大きな溜息を吐いた。
ツナ君が沢山のチラシを持っているのは、とある事件のせいだ。
その事件とは、夏休みが開けた最初の土日で風紀委員八人が重傷の状態で発見されたと云う物だ。
それを電話越しにリボーン君から聞いた時は思わず愛用のマグカップを落とし、また麦茶浸しになってしまった。
そのあたしの反応で、敏いリボーン君は『物語』の話をして来た。
それに素直に頷き、詳しく説明しておこうかと思ったのだが、リボーン君に止められたのだ。
「聞いたら詰まんねぇ」と。
チラシに目線を落としているツナ君を挟んで、塀の上を歩くリボーン君を見遣る。
あたしの視線に気が付いたリボーン君が、不安気なあたしとは反対にニッと笑んだ。
｢ツナ。この際だから、何か習った方が良いんじゃねーか？
それか、了平のボ クシング部に入るとか｣
｢冗談じゃ無いよ！
唯の不良同士の喧嘩だろ？｣
｢違うよ。身に覚えの無い悪戯だ｣
呆れ半分のツナ君に返事をしたのは、あたしでもリボーン君でも無く、不機嫌さがよく伝わって来る雲雀先輩だった。
その遠く後ろでは、何人もの風紀委員が校門の前に立って警戒している。
咬み殺される、と顔を青ざめさせて震えるツナ君。
その一方で、掛かって来た電話に出ていた雲雀先輩が気難しい顔をしていた。
｢君達の知り合いだよね。
笹川了平、遣られたよ｣
「並盛中央病院に搬送されたよ」と言葉を続ける雲雀先輩。
風紀委員以外の人物が襲われたと云う真実に、ツナ君は驚愕と恐怖の表情を浮かべ、あたしは目を逸らし、リボーン君はじっと雲雀先輩を見つめた。
｢麗羅、行こう！ お兄さんが心配だよ！｣
｢……いや、あたしは獄寺君と山本君と一緒に授業を受けるよ｣
少し迷ったが、その方が後から有利になる筈だ。
笹川先輩には非常に申し訳無いが、お見舞いは事件が解決した後に行こう。
物事を順序良くなぞって後者に回るのでは無く、少しでも未来を良い方向へ変えるのが、未来を知るあたしの役目だ。
あたしの返事が予想外だったのだろう。
ツナ君は戸惑ったが、しかし「分かった」と頷いて走って行った。
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作者名：レイチェル | 作成日時：2018年8月29日 9時
