標的３ 未来の日記帳ー５ ページ9
麗羅視点
「それから、もう一つ」。ローシさんは、今度は月白色のロングマントを取り出した。
かなり大きめフードが付いている。顔が隠せるのではないだろうか。
｢そのマントは、特別な生地で出来ている。
フードで顔を覆い隠していても前が見えるようになっている。
しかも変成器付きだ。
戦闘時やマフィアとして振る舞う時に使ってくれ。
正体が知られるのは出来る限り避けたいからな。
そして、それと物語は、常に持ち歩いて欲しい｣
戦闘時や、マフィアとして振る舞う時。
出来れば、そんな時が訪れないで欲しい。
あたしは極めて一般人なのだ。
頭が悪ければ、身体能力が高い訳でも無い。
無力なあたしは、あっと言う間に殺されてしまう。
我知らず顔に影が差す。
ローシさんに軽く額を小突かれた。
｢お前をそのまま裏社会に放り込む訳が無いだろう。
この優しいローシさんが、特別にお前の能力を底上げしてやる｣
ローシさんが、あたしの頭を撫でた。
力が漲って来るのと同時に、酷い頭痛に襲われた。
反射的に頭を押さえたけれど、痛いのは ほんの数秒だった。
何をしたのか。
訊こうと あたしが口を開ける前に、ローシさんが答えた。
｢お前に秘められた能力を解放したんだ。
身体能力の向上と、瞬間記憶能力の追加。頭痛はその時の一時的な副作用だろう｣
｢瞬間記憶能力？｣
｢見た事、聞いた事、感じた事等を瞬間的に覚える能力の事だ。
能力を解放したのは今だから、今より昔は範囲外だけどな｣
随分と驚異的な能力だ。
そんな能力が自分に秘められていたとは、思いもしなかった。
瞬間記憶能力があれば、物語も一瞬で頭に入るだろう。
今、ローシさんが瞬きしたとか、欠伸が出そうになったとか。
どうでも良い事まで覚えてしまったけど。
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作者名：レイチェル | 作成日時：2018年3月14日 14時
