標的14 鮫さんと夜−２ ページ36
麗羅視点
方向音痴なあたしは、案の定城の中で迷子になっていた。
幸い、他の幹部の人や隊員とは遭遇していない。
しかし、ベルさん達とも遭遇出来ないでいた。
そもそも、あたしはベルさんの部屋が何処にあるのかを知らない。
方向音痴以前の問題であった事に今更気が付いた あたしは、同じような扉が並んでいる廊下を彷徨った。
既に寝ているのか、全く喋ってくれないローシさんを恨んだ。
何個目か分からない扉の前を通り過ぎようとして、急に扉が開かれた。
｢う゛ぉおい。なんでお前が此処にいんだぁ？｣
中から出て来たのは、黒縁の眼鏡を掛けたスクアーロさんだった。
事情を説明すると、スクアーロさんは呆れた顔をしながらも部屋の中に入れてくれた。
机の上には、山のように紙が乗せられていた。
｢いっぱい紙がありますねー。
紙が好きなんですか？｣
｢んな訳あるかぁ。
これ全部、ベル達が俺に丸投げした書類だぁ｣
スクアーロさんが書類の束を叩いた。
スクアーロさんが疲労している事は、彼の生気が失われた顔が物語っていた。
この書類を片付ける為に、スクアーロさんは遅い時間まで起きていたのだろうか。
暗殺部隊も大変である。
邪魔するのも よく無いので、部屋の入り口で突っ立っていると、スクアーロさんに手招きされた。
｢眠れないんだろぉ？ 此方来い｣
スクアーロさんは綺麗に敷かれていた布団を捲り、ベッドの淵に座った。
まさか、此処で寝ろと云う事なのか。
｢い、いやー、あたしは少しお話したかっただけなんですけど｣
｢寝れなくても、横になってた方が身体は休まるだろぉ？
俺も暇じゃないんだ。さっさと来い｣
少しスクアーロさんが苛つき始めた。
こんな理由で殺されては困ると、あたしは素直にベッドに横になった。
もう、さっさと寝てしまおう。
しかし、寝る事に神経を尖らせると余計に寝られなくなる物。
強く目を瞑ってじっとしていると、徐に頭を撫でられた。
温かい本物の手。
ベルさんやルッス姉さんにも頭を撫でられたけれど、スクアーロさんに撫でられると、何故かとても安心する。
もし兄と云う存在がいたら、こんな感覚なのかもしれない。
夢の中へ沈む寸前、少しだけ目を開けると、スクアーロさんの優しい顔があった。
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作者名：レイチェル | 作成日時：2018年3月14日 14時
