標的６ 王子様と拉致ー２ ページ20
麗羅視点
そして、
｢な、何するんですかー！？｣
｢何って、横抱き？｣
あたしを軽々と持ち上げた。
驚くあたしに、王子様は当然かのように返して来た。
｢横抱き？｣
《俗に言う『お姫様抱っこ』と云う奴で、男性が女性を持ち上げる抱き方だ。
女性の憧れの一つだぞ、良かったな》
｢よ、良くなーい！ 下ろして下さーい！｣
じたばたと暴れて降りようとするけど、この王子様は細身なのに力があるようで、全く歯が立たない。
一体何をするつもりだ、と思っていると、王子様は屋根に飛び移って山の方へと走り出した。
一体、何処へ連れて行こうと云うのだ。
｢離して下さい！｣
｢ったく、折角王子の城に連れてってやろうとしてんのに、我儘なお姫サマだな。
此処は光栄に思う所だぜ？｣
｢こ、光栄じゃないです！｣
いきなり知らない人に横抱きされて、知らない場所へ連れていかれそうになっている状況で、「光栄に思え」とはこれ如何に。
今まで出会った人――と言っても、二人しかいないが――の中で、一番恰好良くて王子様みたいな人に横抱きされ、「お姫様」呼びされた事に対して「光栄に思え」なのか。
確かに、「お姫様」呼びされた時は一瞬だけドキッと、
｢しし、何で赤くなってんの、お姫サマ？｣
｢あ、赤くなってないです！
第一、あたしはお姫様じゃ無いです！｣
｢うしししっ。姫、可愛い｣
無駄に「姫」を連呼して来る王子様のせいで、あたしの顔が熱くなって行く。
初めてあった王子様みたいな人に「姫」を連呼されるなんて、あたしには耐え兼ねる。
真っ赤になっているであろう あたしの顔を見て、にまにまと嫌な笑みを浮かべる王子様。
面白がられているのが伝わって来て、非常に不可解である。あたしは王子様を睨み付けた。
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作者名：レイチェル | 作成日時：2018年3月14日 14時
