百六十七歩目。 ページ18
―Aside―
エリちゃんが雄英で保護されることになって、プッシーキャッツが復帰することになって、洸汰くんと再会したあの日から約一週間。
そして、下半期のヒーロービルボードチャートJPが発表された数日後。
今現在、Ｃ組寮の共用スペースにクラスメイト全員が揃っている。
にこやかな表情をしてる人はいないし、穏やかな雰囲気とはかけ離れてる。
テレビに映っているのは、今までのモノとは異なる脳無と、それと対峙するエンデヴァーとホークス。
無差別に攻撃しながら暴れまわる白い脳無。
空を飛ぶ上に力も強い、加えて明らかに知能のある動きをしてる黒い脳無。
所々で脳無の目撃情報があるのはホークスに聞いた。
それでも、大きな被害が出たとかはなかった。
オール・フォー・ワンが遠隔で指示している可能性も捨てきれないけど、脳無に関してはまた別のヴィランがいる可能性の方が高い。
そうじゃないと新しい脳無を触れずに造り出すなんてできない。
脳無は指示なしでは動かない。それが少し変わった。
知能を持たされたせいで自我がある。指示なしで行動する。命令には従う。
とんでもない怪物が生まれたなぁ。
一番不思議なのは何故トップ２ヒーローをターゲットにしたのか。
そりゃ上を倒せればあとは早い。これ以上の強敵はいないって証明になるから。
どんな技術なのかは知らないけど、脳無は大量生産できるモノだ。
もし黒い脳無が一体じゃなくて複数での襲撃だったとしたら、いくらトップ２でも勝てなかっただろう。
右手を掲げるエンデヴァーを見て、安心と不安を感じた。
テレビの真正面に突っ立って画面を見つめる私の手を心操くんが握ってくれる。
指先に心操くんの体温がじんわりと伝わってきて、自分の手が冷えてる事に気付いた。
「勝ったな」
『うん』
オールマイト、"平和の象徴"。
決して彼だけがこの国を、国民たちを守って来た訳じゃない。
画面の中で戦ったエンデヴァーも、ホークスも、数えきれないくらいのヒーローがいる。
そして、これからも増え続ける。
きっとヒーローはいなくならない。
ヴィラン......、悪いことをしてしまう人がいるから。助けを待っている人がいるから。
みんなを助ける、なんて理想でしかない。ヒーローは無敵じゃないし神様でもない。
オールマイトが引退したことでみんなそれに気付けるはずなのに。
ヒーローと自分を区別して、自分は誰かに手を差し伸べない。
"誰か"が助けてくれるからと。
▽
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作者名：えると。 | 作成日時：2023年3月30日 22時
