百六十五歩目。 ページ16
―Aside―
「ぼうし...！かわいい、」
『ほんと？気に入ってくれたなら良かった』
「わたしね、Aさんからのぷれぜんとはぜんぶ好きだから、だいじにしてるんだよ」
『うん、大事にしてくれてありがとね。ぼうしはこのままかぶっとくとして...。はい、相澤先生』
「...なんだ」
トートバッグを差し出しただけで訝しげに見てくる先生は本当に失礼だと思う。
危険なものなんて入ってる訳ないのに。
確かにちょっと重たいけど。エリちゃんには持てないけど。
渋々受け取った先生は重量に驚いたのか少し目を見開いて、中身を確認して露骨にいやそうな顔をした。
その表情デジャヴだな〜。
「はぁ...」
『ため息つくほど？？』
「お前は毎回持ってき過ぎなんだよ。甘やかすだけが優しさじゃないぞ」
『知ってますよ。これは愛でですから別物ですね』
りんごが３つ。ゼリーも３つ。飴を５つとケーキ屋さんで買ったミニアップルパイを５つ。
簡単に言えばエリちゃん専用りんごセットである。
3日に1回くらいの頻度で会いに行ってるんだけど毎回このくらいのプレゼントはしてる。
他にも色々してたけど相澤先生に咎められてからは大きいプレゼントは控えるようにした。
何か言いたげに目を向けて来る相澤先生をガン無視してエリちゃんに話しかける。
『今日は疲れただろうからお風呂でゆっくりあったまったらぐっすり寝てね。また会いに行くよ』
「うん、Aさんたちも、ちゃんとねてね？今日はおつかれさまだったと思うから...」
『エリちゃんホントちょー良い子。うちの子にならない？？』
「その辺でいいか？もう時間だ。近いうちにまた会えるよ」
『マジですか！楽しみにしとこ〜！じゃ、エリちゃんまたね！』
「うん、またねっ」
相澤先生と手をつないで車に乗り込むエリちゃんを見送って、見えなくなるまで手を振った。
なんか今の絵面エリちゃんが誘拐されてるみたいだったなぁ。
相澤先生ももうちょい身だしなみちゃんとすればいいのに。エリちゃんが怖がってないからいいのかもしれないけど。
『...』
まだ幼いのに、あんなに怖い思いをしてきたのに、エリちゃんは笑ってくれる。
それがエリちゃんを知ってるヒーローたちをどれだけ救っているんだろう。
少なくとも現場に居たインターン生を含めたヒーローは救われてる。
きっと未来さんも。
『ルミリオン、デク』ﾎﾞｿｯ
「うん？」「なんだい？」
『......呼んでみただけ〜！』
▽
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作者名：えると。 | 作成日時：2023年3月30日 22時
