39-水蛇 ページ39
「あの子は、思った以上に重症だ」
話題は警邏に出た赤い髪のあの子だ。さっき終わった簡単な対面後、何日も顔を見せないのは国民を不安にさせると言って半場無理矢理出て行ったあの子。
「あれだけ自覚のない子が壊れたら厄介だよ。自棄にはなってないみたいだけど……」
家に縛られて、自我を持っているように見せているだけの子。幼少期からのストレスによる味覚障害。常に緊張の糸を張り詰めて、偽る事に慣れてしまった子。この前の事でその糸がぶちぶちと切れかかっているから、元に戻せるかは軍医である俺でも分からない。心の支えになっている“思い人との再会”が、彼女がかろうじて生きている命綱になっているだけ。
「Aちゃんの家から、正式に手紙が届いていた。一週間以内に帰国、そんで形だけの縁談やって、婚姻だって。それに……女の子として生きるか、選ぶのはあの子だ」
家に連れ戻されても、あの子は女性として生きる事はできないだろう。姉達にからかわれ、遊ばれ、父親の言う通りに結婚して、あの子がこれ以上壊れない訳がない。
通常なら社交界デビューする年齢の頃には既に士官学校に入学。蝶よ花よと育てられ、ティカップより重い物を持ったこともないであろう飾られ愛でられるべきであった時期には、剣を振い戦い抜く術を学んでいた。節が目立ち、傷が増え、それでもなお鍛え続け、国のために尽くそうとする。
兄さん軍曹に聞いた話によると給金は趣味に少し遣い、残りは全て実家に送金していたと言う。一人で家族を養っていたのかと。家族だけではない、使用人達の給金の足しになるようにと分けて送金していた事も発覚した。幹部の給料の約三分の二ほどの給料の内、自分用に使うのは微々たるもので、あとは家のために全額送金。それを湯水のように使っているとなると、言い表しようのない怒りが込み上げてくる。そして今度はお金欲しさにAちゃんを嫁がせるだなんて。
「僕、ちょっと話してくるわ」
ふらりと大先生が会議室を後にするのを、一部が止めたがグルッペンが許した。女遊びが激しいって聞くけど、弱みに漬け込んで手ぇ出したら粛清されるよ。なんて、そこまでアホじゃないか。
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紅鴇ﾍﾞﾆﾄｷ＠pc垢 - ミツユキさん» 誕生日プレゼントとしてもう一話更新しました！大きく動いた回(?)となっております！ (2020年7月6日 22時) (
レス) id: a79284f49c (このIDを非表示/違反報告)
ミツユキ - 更新ありがとうございます。私の、最高の誕生日プレゼントになりました！ (2020年7月6日 18時) (レス) id: c04652f79c (このIDを非表示/違反報告)
紅鴇ﾍﾞﾆﾄｷ＠pc垢 - わぎゃあコメントありがとうございます!!コメント嬉しすぎて語彙力追い付かないです。現時点が今作一番の山場ですが、しっかりとハッピーエンドに向いますので！それまでもう暫くお付き合いくださいませ！ (2020年7月5日 22時) (レス) id: a79284f49c (このIDを非表示/違反報告)
碧 - コメント失礼致します。とても丁寧に作り込まれたお話で、私の語彙力ではこのお話の素晴らしさを言い表すことが出来ません…！軍パロ作品の中でも特に繊細に作られたお話だと感じました。これからも素敵なお話を楽しみにしています！長文失礼致しました。 (2020年7月4日 17時) (レス) id: 7cbe04ba0e (このIDを非表示/違反報告)
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