34-赤蜘蛛 ページ34
「え、ちょ、わっ！？」
ぐるりと視界が回る。あろうことか書記長に担がれているのだ。メイド達の言うようなお姫様抱っこではなく、文字通り肩に担がれている。体格差がある以上、いくら藻掻いても意味は無い。
「下ろしてください！書記長！！」
「嫌や！お前何日部屋に籠もっててん！？ろくに食事も睡眠も摂ってないやろ！そんなやつ歩かせられるか！！医務室着くまでじっとしとけ！」
半地下の自室から医務室までの距離は中々遠い。その間を幾人もの目に晒されながら向う。医務室で待ち構えていた軍医様はベッドに横になるよう命じ、何日も食事をしなかったからと消化の良い重湯と水を簡易机に載せられる。
「まずは、食べて」
書記長と軍医様がベッドの横に居座り、与えられた食事を終えたらで良いからすべて話せと迫られた。見張られながら食事を無理矢理口に押し込み、水で流し込んだ。あまり褒められた食事態度ではないが、もうどうでもいい。
「さて、話してくれる？」
軍医様は好奇心と興味の混ざった声音で、問い質した。諦めによく似た感情が喉を迫り上がる。
「つまらない身の上話です。両親は子宝には恵まれましたが、跡継ぎには恵まれませんでした」
自分を含めて女が七人。自分は末娘として生まれた。父親は元軍人として、自分を男児として育てると決めた。五歳の誕生日からすべて奪われた。お気に入りのぬいぐるみ、ドレス、ドレッサー、髪飾り、お姫様が幸せになる絵本。そんなものは男には必要無いと全て捨てられた。与えられたものは剣と銃。軍の知識。男としての立ち居振る舞い。言葉遣い。
姉達はそんな自分が滑稽だったのか、度々邪魔しに来た。部屋にぬいぐるみを置き、ドレスでクローゼットを埋め、机に髪飾りを並べた。その度に父親に叱責され、練習を増やされた。
「入隊時に個室を希望した理由は、女だって事を隠すためか」
「然様です」
十八で試験を筆記実技共に一位で合格。特待生として入隊し、現在は部隊司令官にまで昇級したが、それが面白いという理由で今度は家の為に女として結婚しろと。
「この後、総統閣下に辞表を出します。ご迷惑をおかけしました」
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昨日(7/4)の1993hitは何があった……？
碧さんコメントありがとうございます……!
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紅鴇ﾍﾞﾆﾄｷ＠pc垢 - ミツユキさん» 誕生日プレゼントとしてもう一話更新しました！大きく動いた回(?)となっております！ (2020年7月6日 22時) (
レス) id: a79284f49c (このIDを非表示/違反報告)
ミツユキ - 更新ありがとうございます。私の、最高の誕生日プレゼントになりました！ (2020年7月6日 18時) (レス) id: c04652f79c (このIDを非表示/違反報告)
紅鴇ﾍﾞﾆﾄｷ＠pc垢 - わぎゃあコメントありがとうございます!!コメント嬉しすぎて語彙力追い付かないです。現時点が今作一番の山場ですが、しっかりとハッピーエンドに向いますので！それまでもう暫くお付き合いくださいませ！ (2020年7月5日 22時) (レス) id: a79284f49c (このIDを非表示/違反報告)
碧 - コメント失礼致します。とても丁寧に作り込まれたお話で、私の語彙力ではこのお話の素晴らしさを言い表すことが出来ません…！軍パロ作品の中でも特に繊細に作られたお話だと感じました。これからも素敵なお話を楽しみにしています！長文失礼致しました。 (2020年7月4日 17時) (レス) id: 7cbe04ba0e (このIDを非表示/違反報告)
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