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32-赤蜘蛛 ページ32

庭で起きた騒動のせいか、他部隊との合同訓練の時は妙に気不味い。司令官に関しては何も聞かれず、自分も答える事は無いと返し続けた。

「で、今日は暫くぶりの近距離部隊と合同訓練か」

気不味い気不味いといくら言った所で変わらない。割り切って職務を全うするだけだ。相変わらず自分を見つけて舌打ちする近距離部隊司令官。訓練内容は観光客または武装した敵と対峙した際の対処法だ。戦場か町中か、生かすか殺すか、状況判断も必要になってくる。

「訓練中失礼します!警邏部隊司令官、お客様、です」
「客人……?」

だとしても、普通インカムで呼ぶか、待たせるはずだ。

「相変わらずな格好ね、A」
「…………何故」

何故、彼女達が、此処に?

「男臭い所だこと!あなたよくも黙っていられたわね?」
「そうそう、A、あなたに縁談よ!」
「軍人の女性なんて珍しいでしょ?相手の方も是非って言ってくださったの」
「よかったわね!」

彼女達が笑う度、動く度にドレスが揺れ香水が香り、思考が鈍っているのかケラケラと笑う姉達に何も言い返せなかった。騒ぎを聞きつけた他の部隊、騎兵部隊司令官や拷問部隊司令官、暗殺部隊司令官、他にも野次馬のように人が集まってくる。

「おい、どういう事や」
「あら、あなた黙ってたの?」
「何をや」
「Aは女よ?」

姉に外された軍帽から、纏めていた髪が零れていく。嗚呼、なんで、ここまで積み上げてきたものを、彼女たちは一瞬で破壊するのだろうか。

「各自、定刻まで訓練を続けてくれ」

部下の顔は見られなかった。これ以上、居られなかった。ふらりと脚が後ろを向き、身体を何処かに運んでいく。次第に速度が増し、気付けば自分の部屋の中に居た。

「あ……ああ……、うああああぁあぁぁぁぁ!!」

泣いた。喉が激痛を訴えても、涙で視界が歪んでも泣いた。
泣き疲れた自分の脳は全てを拒絶したらしい。空腹感も睡魔も来なかった。指一本さえ動かせなかった。

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紅鴇ベニトキ@pc垢 - ミツユキさん» 誕生日プレゼントとしてもう一話更新しました!大きく動いた回(?)となっております! (2020年7月6日 22時) (レス) id: a79284f49c (このIDを非表示/違反報告)
ミツユキ - 更新ありがとうございます。私の、最高の誕生日プレゼントになりました! (2020年7月6日 18時) (レス) id: c04652f79c (このIDを非表示/違反報告)
紅鴇ベニトキ@pc垢 - わぎゃあコメントありがとうございます!!コメント嬉しすぎて語彙力追い付かないです。現時点が今作一番の山場ですが、しっかりとハッピーエンドに向いますので!それまでもう暫くお付き合いくださいませ! (2020年7月5日 22時) (レス) id: a79284f49c (このIDを非表示/違反報告)
- コメント失礼致します。とても丁寧に作り込まれたお話で、私の語彙力ではこのお話の素晴らしさを言い表すことが出来ません…!軍パロ作品の中でも特に繊細に作られたお話だと感じました。これからも素敵なお話を楽しみにしています!長文失礼致しました。 (2020年7月4日 17時) (レス) id: 7cbe04ba0e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:紅鴇ベニトキ | 作者ホームページ:http  
作成日時:2020年2月17日 16時

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