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「あのさ、まふ。今からちょっと出掛けない!?」
先程の嫌な思いを打ち切りたく、元より計画してあったものを伝えると、彼は心底嬉しそうに笑顔を輝かせた。
「出掛けるの!?もちろん!久しぶりのデートだ!やった!!」
「ずっと前から秘密にして計画してたからそんなに喜んで貰えたら嬉しいよ」
「わざわざ計画まで立ててくれてたんだ。嬉しいし早く行きたいから準備してくるね!」
パタパタと部屋に駆け込んでいく彼のセンラを見送りながら、私も自分の身支度をすべく、同棲してある部屋の鏡に向き合った。
*****
「Aー!ちょっと来てー!!」
計画を立てた大まかな主旨は、ショッピングモールで色々な店を回ると言う大雑把な物だった。
まぁ、それにも意味があってここで色んな店を回ることにしたのだが。
そんなショッピングモールの店を回る中でもアクセサリーショップに行くと言う細かな内容まで計画していたので、その店に入っている最中、突如まふから声が掛かった。
何事かと思って、声のする方を振り返ると、満面の笑みを浮かべてこっちこっちと手招きをしていた。
「どしたの…?そんないきなり呼んで…」
「いいから、いいから!!向こう向いて!!」
「えっ、う、うん……?」
彼に好き勝手指示されるがままに言う事を聞いていると、首元に小さな光がキラキラと輝く。
その近くを見ると、『ムーンストーン』『別名:月長石』と横に説明が書いてあった。
まるで、月の光を浴びたかのように白く綺麗に輝く宝石に思わず目を奪われる。
「今日さ、ホワイトデーでしょ………?だからボクからのプレゼントなんだよね…」
彼からのプレゼントが嬉しいのは勿論、彼の言葉もまた嬉しかった。
そして、今日がホワイトデーと言う事を覚えていた、今日の日付を覚えていた、と言うだけで私達にとっては大きな喜びなのだ。
彼はアルツハイマーになってから約三年。どんどん病状は進行して、何もかも忘れ始めていた。
印を付けたカレンダーを見ない限り、その日の日付が分からなくなるまでに。
医者には「このまま回復することはなく、進行を抑えることしかできない」と三年前に断言されたのだ。
だけど、もしかしたら、なんて淡い期待を胸に抱いてしまう。
今までの事も全て思い出して、これから記憶を失っていく事がなくなるんじゃないか。
四年前の同じ日にプロポーズした事を思い出してくれるんじゃないか、なんて。
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雨上がりのcrew(プロフ) - ところで、甘味没収のときのセンラさんは夢主ではなく他の人と結婚をしていたのでしょうか、、、?隠し持っていた結婚指輪と書いてあったので、、、 (2019年7月16日 0時) (レス) id: 11f12a305b (このIDを非表示/違反報告)
雨上がりのcrew(プロフ) - すごい。。。この作品私得←これからも更新頑張ってください!! (2019年7月16日 0時) (レス) id: 11f12a305b (このIDを非表示/違反報告)
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