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まふまふの言葉を聞いて、慌てて個室を出るとすぐに2人を見つけた。
見つけて、しまった。
影を重ねる2人を。
ぐっ、とAの腕を掴むと彼女と彼は驚いたように俺を見つめた。
「……A、」
「…か、なた…」
「何で、ここで何してんだよ。ここで、誰と…っ」
「違うの、ねぇ、かなた」
なら何で、泣いてんだよ。
ふるふると首を振るAを引きずるように店を出る。
まふまふのこととか、あの男のこととか、どうでもよかった。
ただ腹が立って、ただ悲しくて、ただ悔しくて。
腕を掴む力が自然と強くなる。
「…彼方、待って…!」
「やだ、待たない」
タクシーに乗り、家へ急ぐ。
運転手が訝しげな目を向けたけど、そんなのもどうだっていい。
家に着いて、乱暴に鍵を開ける。
そのまま部屋まで。
どさ、とAを押し倒すとAは悲しそうな顔をした。
…悲しいのは、こっちだっての。
「…ね、A。俺のこと嫌いになった?」
「…ちがう」
「それとも、元から俺のこと好きじゃなかったとか?」
「違う…!」
違うよ、違う。
うわ言みたいにそう言うA。じゃあ、何だっていうの。
出会い方は不純だったけどさ、俺は本気でAが好きだったよ。今でも好き。
こんな歳だし、結婚したいなとかも考えてたよ。
でも、Aは違ったの?まだ元カレのこと考えてるの?
元カレって、そんなによかったの?
俺じゃ、ダメなわけ?
感情が抑えられなくて、何も考えずにそんなことを垂れ流した。
怖くて、Aの顔が見れなかった。
「……彼方、私、さっき元カレによりを戻そうって言われたの」
「……」
「それで、無理やりキスされたの」
「……」
何も言えない。だって、Aが泣いていたから。
付き合って、別れて、傷つけられて、振り回されて、キスされて。
毒されるには十分。でも、だめ。
「…私、ほんとはまだ志麻くん…元カレのことが好き」
「…、」
「でも、同時に彼方のことも好きだよ」
今は、元カレ以上に好きだけどね。
嘘かもしれないけど、それでもその一言でどうしようもなく舞い上がってしまう。
その言葉1つで好きが溢れてしまう。
去年のホワイトデー。Aはずっと元カレを気にしてて、散々だったよな。
けど、今年はきっと、違う。ううん、絶対違う。
だって、今年は俺たち、笑ってるもんな。
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雨上がりのcrew(プロフ) - ところで、甘味没収のときのセンラさんは夢主ではなく他の人と結婚をしていたのでしょうか、、、?隠し持っていた結婚指輪と書いてあったので、、、 (2019年7月16日 0時) (レス) id: 11f12a305b (このIDを非表示/違反報告)
雨上がりのcrew(プロフ) - すごい。。。この作品私得←これからも更新頑張ってください!! (2019年7月16日 0時) (レス) id: 11f12a305b (このIDを非表示/違反報告)
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