ラナンキュラス (ページ16)

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俺の名前の隣に並んだあの人の名前が
ずっと目に焼き付いてて離れなくて
青木さんが話してるはずだろうけど
俺の耳には一切入ってこなかった

“おい光輝！“と光成に肩を揺さぶられて
周りを見渡すと会場には殆ど人が残ってなくて
いつの間にか入社式が終わっていたことに気づく
そんな俺に光成が荷物を持ちながら“早く行くぞ“と
言ってきて慌てて席を立った

「光輝、絶対話し聞いてなかったっしょ」

『エルダー発表以降の記憶ないんだけど』

俺の答えにはぁーとため息をついて
やっぱりと納得した顔をする光成

「式中何回か揺すったけど無反応だから
　そうだと思ったわ」

“それじゃ明日どうすんの？“と
今度は意地悪な顔をするから
お願い教えて！！と縋り付いて頼んだ
結果的にしゃーねーなと言いながらも
教えてくれるからやっぱいい奴だよね

光成と別れて家に帰り
手を洗うために入った洗面所の
鏡に映る自分の顔を見て
手を頬に添えると思いきり引っ張ってみる
ちゃんと伝わってきた痛みに
本当に夢じゃないんだなって

適当に夕飯を済ませてお風呂にも入ったから
いつでも寝れる状態だけどそんな気分じゃなくて
ボケっとテレビを見ていると鳴る電話

画面には“渉”と書かれていて電話に出ると
渉のパパが出て“クロダゲンキ？”なんて
いつもの感じで話すから思わず笑ってしまう

「ごめん、ババが黒田と話したいって言うから」

『いーよ別に！楽しかったし。
　それよりどーしたの？』

「今日入社式じゃん？黒田電話かけてこないから」

待ってたんだけど？なんて少し寂しそうな声で
渉が言うから俺のこと好きじゃん？なんて
ふざけた事を言ってみる

「ふざける事言う余裕あるなら安心したわ！」

なんか元気なさそうだったからさなんて言われたらね
素直に話しちゃうよね

『いや、元気はあるんだけど
　なんか一気に叶ってくから戸惑ってる』

そう言って今日の出来事を渉に話すと

「ガチか！まあ想像してきたことが
　一気に現実になると流石に戸惑うか」

『でしょ？まぁ明日からは研修で
　Aさんに会えるのはまだ先なんだけどね』

「まー逆に研修でよかったんじゃん？
　準備できるし！戦いはこれからよ」

『戦いって笑そうだね！確かに』

渉に聞いてもらって少し落ち着いたところで
いい時間だからと電話を切った
“絶対Aさんと付き合えるよう
格好いいところ見せてアピールしないとね！”と
明日からの研修も頑張れそうだ