五夜目 ページ5
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反射的に零れた言葉は怒っているように聞こえたのか島男が言い訳を始める。
「いやぁ、な？なんか嫌な予感すんねん」
「じゃあ登んなきゃいいじゃんか！」
強く言いすぎたか、と思ったがそうなってしまっても仕方ないだろう、これは。
内容が内容だ。
あたしの言葉を聞いた島男は少し黙ってまた話し始めた。
「あのさ、俺が高校の頃いっつも一緒に登山してるやつおったやん？」
「宇都宮君のこと？」
「せや。んでな、前に譲と山登った時にな、アイツのミスで俺も怪我してしもうてん。それでアイツ山が怖くなってしもうたらしくてなぁ？山、登らんくなってしもたんよ。」
まだまだ山好きなくせにな、と少し寂しそうに島男が笑う。
「だから俺が世界一でっかいこの山に登れたら、アイツがまた登山の世界に戻ってきてくれると思うねん。ダメでもなんかしらの影響を与えられると思っとる。だから俺はこの山に登るって決めた。」
その時の島男の声は今までで一番真剣な声だったと思う。
「……それは、自分の命を懸けてでも？」
「たとえそうなっても俺はアイツに、譲に、また山を登って欲しい」
「もしアンタが死んだら宇都宮君はもっと山が怖くなると思う」
「だからお前に電話してん！もしも俺になんかあったら譲のこと、頼むわ。」
まぁアイツならここまですれば大丈夫かもしれんがな！と島男が付け加える。
「っ…ならいいじゃない！あたしにそんなこと頼まないでよ！そもそも山行く前に自分でどうにかしなさいよ！」
島男が死んでしまった時のことなんて聞きたくなかった。そしてそんな“もしも”の事を考えている島男に苛ついた。
「俺はアイツにもうこれ以上なんもしてやれへんのや……。狂気山脈を登頂するんが俺のしてやれる最後のことだと思っとる。まぁ上手くいくんか分からへんけど」
彼の声はだんだん弱々しく掠れていって彼が宇都宮君のために沢山手を尽くしたことが分かった。
島男は何としてでも宇都宮君にまた山を登って欲しいのだ。
その気持ちが嫌という程伝わってきてしまった。
あたしに残された選択肢は二つ
けど、あたしがどっちを選ぶかなんて
もう決まっていた。
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茜(プロフ) - 紅蓮さん» 私はそのコメントが嬉しくて涙が止まりません…そう言ってもらえるのが書き手として一番嬉しいです！ (2020年5月23日 16時) (
レス) id: d2182e9bad (このIDを非表示/違反報告)
紅蓮 - 何回見ても涙が止まりません… (2020年5月23日 13時) (レス) id: 437f8327e7 (このIDを非表示/違反報告)
茜(プロフ) - 不透明さん» ありがとうございます！！拙い文だったかもしれませんが、当時の精一杯の気持ちで書いたので嬉しいです！ (2020年5月16日 16時) (レス) id: d2182e9bad (このIDを非表示/違反報告)
不透明(プロフ) - 島男の最後の「好きだった」のところでもう涙が止まりませんでした！夢主ちゃんの思いと島男の思いに感情移入しちゃって…ほんとに良かったです！！ (2020年5月16日 16時) (レス) id: 187d5f8a14 (このIDを非表示/違反報告)
茜(プロフ) - 鬱瀬さん» ありがとうございます！！そう言ってもらえると書いてよかったと思えます (2020年5月10日 15時) (レス) id: d2182e9bad (このIDを非表示/違反報告)
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