もしこの幸せを ページ13
✩.*˚
「ッあ、ありがとうッ…」
小さな声だった
か細くて、聞こえるか聞こえないかぐらいの声だったけど確かに発したその言葉
私は口角が上がるのを抑えきれず、おいでおいでと彼の手を取った。
………
本当にここにある食事を自分が食べていいのか
そんなことを考える暇もなく、Aはいただきますっと合掌し小さな口にシチューを運んでいる
『食べないの?』
彼女はスプーンを持った手を止め、こちらを伺うように首を傾げた
食えるわけないやろ
そう言うつもりだった。怪しまなければいけないのに、今すぐ棚にあるナイフを手に取り彼女を殺し、家にある物を奪い、なんとかして森を抜ける
毒が入ってるかもしれない食事を易々と食べるほど自分は馬鹿じゃない
そうだ、よく考えればこんなの出来すぎてる
昨日の、今日で、こんな自分を、
「(こんな汚ったない俺をッ…)」
.
『…これ、ゾムのために作ったの
私1人で食べきれないし
さっき、ありがとうって言ってくれたの結構嬉しかったんだけど』
眉を下げて笑う彼女
一口だけ
一口だけ、
これを口に放り込んだらナイフを取って、
それから、それから、
( ボロボロッ )
「〜〜〜ッッ」
本当は気づいてた。
この幸せは本物だと
ゾムという名前を受け止めてる自分がいることを
クリームの香りが鼻をくすぐる
シチューの優しい味が口いっぱいに広がり
堰を切ったように涙が留めなく溢れた
.
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キリス(某教祖)(プロフ) - 感動しますたあああ (1月15日 16時) (レス) @page50 id: 62b7efaae2 (このIDを非表示/違反報告)
ゆう - 伏線が凄すぎる... (5月21日 22時) (レス) @page50 id: f98c154ca8 (このIDを非表示/違反報告)
イレイザー - すんげぇ好き (5月11日 7時) (レス) @page50 id: 3973b7c9c7 (このIDを非表示/違反報告)
ネギです。 - 夜中に見ました。もう凄く感動する話でした。 (5月8日 1時) (レス) @page1 id: d88732d1b8 (このIDを非表示/違反報告)
ゆっきー(๑╹ω╹๑ ) - めっちゃ良いですね!! (2023年4月9日 17時) (レス) @page50 id: dd978d4aba (このIDを非表示/違反報告)
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