こっち向いてったら ページ19
リアル、恋人設定
ymside
いのちゃんと付き合い始めて暫く経って、俺は気がついた。俺、いのちゃんと目が合わない。全く目が合わないなんてことはない。でも話しはじめにちらっと見られる程度でその他はすべて俺以外を見ている。複数人で喋っていたら別の人を見ているし、二人きりで話していても下を向いている。その理由は大体想像がついた。きっと恥ずかしがり屋な彼の照れ隠しなんだろう。正直可愛いけど、やっぱり俺のことも見てほしい。ということでいのちゃんを自宅に呼んでしかけてみることにした。
「どー?これ、美味しい?」
「マジでうまい、山田天才だわ。」
まずいつもどうり、向かい合わせに座って会話をしてみる。彼の視線の先は俺が作った手料理。
「ホントに?」
「ほんとほんと!」
正面から覗き込むようにして顔を見るけど視線はやっぱり合わなかった。
そのうち晩御飯を終えてソファーでリラックスタイム。しかけるなら今だな、と思ってテレビをぼーっと見ているいのちゃんの隣に座った。
「ねーねーいのちゃん、俺、変わったところあるんだけどどこだと思う?」
「え?」
めんどくさい彼女のような質問をしてしまうが、これは俺の顔をちゃんと見てもらうため。
「前髪?」
「違う。」
「眉毛?」
「違う。」
んーっと俺に近づいて悩むいのちゃんをじっと見つめる。すると彼の真っ黒な瞳とバチッと目があった。反射的にか一瞬で逃げてしまう彼を逃さないように頬に手をそえる。
「もっとちゃんと見て。」
「っ……」
あ、可愛い、その余裕なさそうな顔。少し唇をむっとさせて顔を赤くさせている。
「ねーっ。」
顔を近づければ近づけるほど目をキョロキョロさせる。
「こっち向いてったら。」
耐えられなくなってその唇に軽くキスをするとまんまるな目が俺を見つめていた。いつものいのちゃんとは思えないほど顔がまっかっかで何か言いたげな顔。
「いのちゃん、目合わなさすぎ、ちゃんと俺のこと見てよ。」
俺がそう言うと困った顔をして俯いてしまった。やっぱり恥ずかしがり屋ないのちゃんにはちょっと早かったかななんて思っていると黒い瞳がゆっくりと俺をとらえた。今度は俺の息がつまる気がした。
「見てるもん、ちゃんと山田のこと。」
上目遣いでそんなこと言われてしまって平気な男など一人もいない。いつの間にか俺の鼻からもたらーっと血が出ていた。あぁもう可愛すぎかよ!やっぱ破壊力強いから目見るのちょっとだけね!
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