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S._4 ページ4

一人暮らしを始めたばかりの部屋にはまだ、最低限の荷物しか置いていなかった。
そんなに狭くはないこのマンションの一室。



まさか、初めて呼ぶ人が犯罪者なんて。



『お邪魔しまぁす』


「何もないけど…」


『雨風凌げるだけでええねん。これ、錆びてまうし』



鮮明に映る赤。
自分のためではなく、血を吸う道具のために。
狂ってるんだ。
もうあの時の大毅はいないんだ。



東京に居たと言っていたけど…
そこで何かあったのだろうか。
誇るべき首都である東京に、あの街に、
大毅は汚されてしまったのか。



『A、仕事してんの?大学?』



とりあえずその赤い刃を置いて欲しいとは思うものの口には出せなかった。



「専門学校。保育士さん目指してるから」


『へぇー…ええ夢やん』



ナイフを見つめたままひとつも感情のこもらない声でそう返してきた。
大毅には夢はないのかな。
もう夢見ることも諦めてるのかもしれない。



確か同い年だった。
同い年でも、どんな子供時代だったかでこんなに違う人間になってしまう。



聞きたいことはたくさんある。
聞き出せるのはあたしだけだと思う。
でも…



『お、布団やぁ笑』


『お茶ある!』



明らかに他人とは喜ぶポイントが違う大毅に軽々しいことは言えなかった。
布団もお茶も何気ないもの。
日常に喜ぶのは、その日常がなかったから。

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あっぷる(プロフ) - 遅くなりましたが初めて読ませていただきました。こんなに素敵で狂気的で美しい作品に初めて出会いました。繊細な言葉一つ一つが情景を恐ろしく想像させてくれる表現力、世界観には頭が上がりません。とても面白かったです。 (2020年5月1日 10時) (レス) id: 5a325cfe9e (このIDを非表示/違反報告)
カジャ(プロフ) - 凜憧さん» 毎度ありがとうございます。名前を見なくても私の作品だと分かって頂くことは意識していたことでもありますので嬉しいです、グダグダでございましたがご愛読ありがとうございました。 (2019年8月27日 9時) (レス) id: c91b141c55 (このIDを非表示/違反報告)
凜憧(プロフ) - 完結おめでとうございます。通知を見るより前に作品を見つけ、冒頭からカジャさんの作品かなあと思いました。表現も世界観も結末も、カジャさんらしく妖しい魅力でした。今回もすごく面白かったです、更新お疲れさまでした! (2019年8月26日 18時) (レス) id: f3cbf63448 (このIDを非表示/違反報告)
よーぐりゅ(プロフ) - カジャさん» あってます(( 認知あったなんて!笑ありがとうございます。こんなに素晴らしい作品なのになんで赤星にならないんでしょうか… 新作も楽しみにしてます!! (2019年8月25日 20時) (レス) id: c89cc366d1 (このIDを非表示/違反報告)
カジャ(プロフ) - おずさん» ラストだけは!ラストだけは他の場面よりも頑張ったつもりでございます笑 私の語彙力ではサイコパスというものの表現が全然足りなかったですね…ご愛読ありがとうございました。 (2019年8月25日 18時) (レス) id: c91b141c55 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:カジャ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/kajya1734  
作成日時:2019年8月1日 19時

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