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S._15 ページ15

お母さんの感情が収まるのを待ち、慰めにもならないような言葉しか並べられないまま出てきてしまった。



半月が夜空で笑っている。



言わなければと思った。
大毅がしていることは途切れない黒雲を被害者家族の空にかけているんだと。
抜け出せない虚空を作った後…彼は何がしたいのか。



いつか聞こうと思っていたことがいつかでは済まされなくなった。
悲痛な叫びを隣で聞いたら、いつかなんて言えなくなった。



電気のついたあたしの部屋。
もう、戻っているようだ。



「ただいま」


『…おかえりー』



ハンガーにかけられたパーカーに真新しい紅。
また増やしてしまったか。



右手にいちごグミを持ちながら携帯をいじる大毅。
その隣にそっと座る。
ん?って顔をしてグミの袋を差し出してくるからありがたくひとつ取り出した。



『グミ好き?』


「んー…あんまり?」


『なんやそれ笑』



昨日さ、と少し大きめの声で切り出した。
それでも目線は携帯から離れなかったけど気にせず続ける。
無理強いさせたら何をされるか分からない。



ただでさえ怖いのだ。



「大毅が刺した人。あたしのバイト先の子供の父親だったの」



コロシタ、とは言いたくなかった。
どっちにしろ還らないのだから同じだ。



『ふーん』



そう、仕事だもんね。
相手がどこの誰でも大毅の知ったこっちゃない。



怖い。
すごく怖いけど、
グミと携帯を同時に取りあげてあたしに視線を向かせた。

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あっぷる(プロフ) - 遅くなりましたが初めて読ませていただきました。こんなに素敵で狂気的で美しい作品に初めて出会いました。繊細な言葉一つ一つが情景を恐ろしく想像させてくれる表現力、世界観には頭が上がりません。とても面白かったです。 (2020年5月1日 10時) (レス) id: 5a325cfe9e (このIDを非表示/違反報告)
カジャ(プロフ) - 凜憧さん» 毎度ありがとうございます。名前を見なくても私の作品だと分かって頂くことは意識していたことでもありますので嬉しいです、グダグダでございましたがご愛読ありがとうございました。 (2019年8月27日 9時) (レス) id: c91b141c55 (このIDを非表示/違反報告)
凜憧(プロフ) - 完結おめでとうございます。通知を見るより前に作品を見つけ、冒頭からカジャさんの作品かなあと思いました。表現も世界観も結末も、カジャさんらしく妖しい魅力でした。今回もすごく面白かったです、更新お疲れさまでした! (2019年8月26日 18時) (レス) id: f3cbf63448 (このIDを非表示/違反報告)
よーぐりゅ(プロフ) - カジャさん» あってます(( 認知あったなんて!笑ありがとうございます。こんなに素晴らしい作品なのになんで赤星にならないんでしょうか… 新作も楽しみにしてます!! (2019年8月25日 20時) (レス) id: c89cc366d1 (このIDを非表示/違反報告)
カジャ(プロフ) - おずさん» ラストだけは!ラストだけは他の場面よりも頑張ったつもりでございます笑 私の語彙力ではサイコパスというものの表現が全然足りなかったですね…ご愛読ありがとうございました。 (2019年8月25日 18時) (レス) id: c91b141c55 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:カジャ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/kajya1734  
作成日時:2019年8月1日 19時

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