CROWN No.172 ページ22
‥
後少し上を向けば、絶対鼻がぶつかる。
それくらいの位置に、彼の顔がある。
瞳はまっすぐ私を捉えて、瞬きひとつしない……ような眼光。
彼からは、ミントのような冴えた香りがする。
廊下には誰もいない。
誰かのフロアで、イベントでも行われているんだろうと思う。
赤黒い照明では、外に出た時に目がチカチカしそうだ。
隼「……Aちゃん」
A「離れて」
隼「嫌だね」
A「どうして」
隼「さっき言いかけたこと、訊こうと思って」
A「……何」
手に、じんわり汗が滲む。
やはり、さっき隼は何かを言いかけたのだ。
その言葉の内容が、何となく解ってしまうあたり、うん。
何も言わなければよかった。
私の視線を凝視して動かない。
目を合わせないようにしていたら、彼の癪に障ったらしい。
ぐいと顎を持ち上げられた。
否が応でも、彼の顔が目に入る。
それで、私の予想通りの質問を口にする。
隼「どうして、さっき言ってた後輩が女だって知ってんの？」
口をつぐむ。
歯を当てた唇の辺りの肉が、ごろごろと唸る。
息を呑む。
音を立てずに、じんわりと血の味が広がる。
屁理屈をこねたって、真をついてくるに決まってる。
嘘は言えない。
かと言って、真実も言えない。
言いたくない。
……彼女が、私の知っている人間だなんて。
隼の話を聴いて、判ってしまった。
まさか、彼女が人を罠に嵌めるような真似をするなんて。
聞いてはいたけど、まさかその相手が隼だなんて。
……なんて、偶然……
A「教えたくない、って言ったら」
隼「殴ってでも吐かせる」
A「……」
隼「俺は犯罪者だよ？ 詐欺をしたの。
なんで俺に憐れみの目を向けるの？
俺の高校生活を踏みにじったあいつに、復讐しようと考えてるような奴だよ」
A「それは嘘だよ」
隼「……は？」
恐喝も詐欺も、実際隼がしてきたことなのかもしれない。
高校生活を壊されたことに、腹を立てたかもしれない。
当然の感情だ。
彼が、どんなに彼女に心を許していたとしても。
隼「幻滅したでしょ、俺はこんな人間だって」
A「なんでそうやって自分の価値を卑下するの」
また、裕太の時のように、欠片が届きますように。
‥
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もも - 面白いです！更新お願いします！ (2021年1月24日 23時) (
レス) id: 0e215cea34 (このIDを非表示/違反報告)
iro(プロフ) - コメント初めてさせてもらったので言葉とか変だったらすみません。また何回も読み返してゆっくり更新待っているので頑張ってください!! (2020年12月29日 2時) (レス) id: c0e332dce1 (このIDを非表示/違反報告)
iro(プロフ) - 4回くらい読み返させてもらってます!!何回読んでも最高で、最後まで読んでは続きがはやく読みたいーって1人で騒いでますwゆっくりでいいですが、できたらはやく続き読みたいです(言ってること矛盾しててすみません)あとオチは佐野玲於だと嬉しいです。 (2020年12月29日 2時) (レス) id: c0e332dce1 (このIDを非表示/違反報告)
かな - ゆっくりでいいので更新待ってます！亜嵐くん落ち希望です！ (2020年10月26日 18時) (レス) id: 95ffd40df7 (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - 隼くん落ち期待しています！！ (2020年10月21日 21時) (レス) id: 1c9bc00d48 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Kyoh.
| 作成日時：2019年1月24日 4時
