CROWN No.149 ページ49
‥
何か、本を読んだことがある。
賭博で騙された主人公が、その知能を活かして、自分を牢獄へ落とした人達へ華麗に復讐していくと言うストーリーの小説を。
でもここはそんな作り物の話の中なんかじゃない、現実。
自分をここに呼んだ張本人達のうちのひとりが、私に賭けを求めている。
そして、笑顔のワケを教えてあげると言う。
どうして迷っているのだろう。
ここは即座に、すぐに、断るべきだと言うのに。
隼「あれ？ 違った？ Aちゃんの欲しいものって別のもの？」
A「……」
ああ、ひとつに絞れないから口が動かないんだ。
偽物の笑顔は嫌い。
でも彼らにもその理由があるんだと思うと、知りたいと思う。
知りたいと、思ってしまう。
私は意を決して答えを口に出す。
A「……分かった。その賭け、乗る」
隼「よっしゃ、そう来なくっちゃね」
そう言うと、山積みから3枚ずつ、隼は摘みとった。
そして、左手に持った3枚を私に、右手に持った3枚を自分のところに置いた。
そして、ディーラーに目配せをする。
チップを配るのはディーラーの仕事なんだけどね、と隼は笑った。
隼「ここは、俺らで作ったんだよ」
A「え？」
周りには、ふたりのゲームを傍観しに来る賓客が増える。
さっき、スタッフが別のゲームへと連れて行ったはずなのに。
ディーラーは、ゲームの準備。
スタッフが運んでくるのは、シャンパン。
さっきも運ばれてきたけれど、気づかない間に泡が消えちゃった。
唐突に話し始める隼。
私はチップをどこに賭けるかで頭をフル回転させているのに、空気と言うか、場を崩すのも上手い彼。
あ、目が合った。
隼「それぞれの "過去" が、それぞれのフロアの成り立ちに関わってる。
弟くんを溺愛してたお母さんが、カクテルを好きだったって、裕太くんはカクテルバーを設計した」
A「は？」
隼「あの部屋に目玉のようなデザインが施されているのは、涼太くんの案。
自分の親(義理だけど)を埋めている時の、上から見下ろしてたあの彼女の目が、どうしても忘れられないんだって」
A「……」
隼「忘れたいなら、描かないでおけばいいのにね。
……そうやって、俺らは自分から過去に縛られに行ってるのかもしれない」
最後に口に出した言葉で、また彼は違う笑顔を見せた。
……ねえ、それは笑ってるの？ 悲しんでるの？ 苦しんでるの？
‥
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1449人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
シェリル(プロフ) - 最初から一気に読ませていただきました。小説に引き込まれ、楽しくドキドキしながら読ませていただき、素晴らしい小説に出会えました！書くのは大変だと思いますが、京羽さんの小説の虜になってしまったので、これからも応援しています！オチは片寄くん希望です。 (2018年12月23日 18時) (
レス) id: 04471f650b (このIDを非表示/違反報告)
さぁや(プロフ) - お話の構成や、人物の様々な表情が細かに書かれており読みごたえがありました。片寄くん希望です。 (2018年10月25日 17時) (レス) id: 0e28084fa3 (このIDを非表示/違反報告)
たちばな(プロフ) - 京羽さんの言葉のセンスやとても凝っているお話の構成が大好きです。読むたび次話が楽しみでなりません。これからも楽しみにしています！ オチは玲於くん希望です (2018年10月23日 22時) (レス) id: 37da8e3cba (このIDを非表示/違反報告)
殺し愛(プロフ) - BIC CITY RODEOからこの世界観を作り出すなんて凄いです！GENEのメンバーも現実設定の様で違う様な…独特の設定で面白いです。最後に、オチは隼君が良いです！ (2018年10月22日 17時) (レス) id: ee020fb2bb (このIDを非表示/違反報告)
さくらんぼ(プロフ) - コメント失礼します！京羽さんの語彙力わたしに分けてほしいです、、笑 オチは亜嵐ちゃん希望です！かつこいい亜嵐ちゃん期待してます！！！ (2018年10月22日 6時) (レス) id: bc935dea58 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Kyoh.
| 作成日時：2018年1月26日 0時
