【BIG CITY RODEO / GENERATIONS】 CROWN 3

CROWN No.148 ページ48

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──賭けるのは、自分達の大事なもの









イカサマは許されるけれど、嘘は許されない。
多分だけど、カジノってそんな場所。
隼は本気で言っている。
自分達の大事なものを賭けて、今ここで勝負しようと。



運ばれてきたチップ。
隼はそれを手で掴んで、ごっそりと盤の上で引きずる。
たくさんの数字が書かれたマス目達の上で止まったそれは、1枚だけ、隼が手を離した時に転がり落ちた。



そのチップはころころと回転して、私の目の前で息の根を止めた。









隼「さあ、Aちゃん。君は何を賭ける？」


A「……っ」









大事なもの、大事な物、大事なモノ。
それは無固形物であり、固形物であり、それ以外の何か。



大事な……そんなの、ひとつであるはずがない。
私は、何を賭けるのが最善……いや、最悪なのか。
私の持ってるものの中で、どれに "捨てる" 覚悟があるのか。



……そんなの、決められない。









A「……わ、私」


隼「珍しく弱気だね？」









隼は、また笑った。
憤りどころじゃない、それよりも今は自分の中のモノを整理しないといけない。
冷静に、冷静に、冷静に。


……私は、どうして自分の心臓の拍動に殺されかけているんだ。









隼「……分かった。じゃあ、こう言う風にしよう」


A「？」









ディーラーとルーレットの盤。
ノンアルコールのシャンパン。
山積みになったチップ。
自分の近くに、傍にあるのはそれだけ。



ただそれだけのはずなのに、私は刹那、彼をとても近く感じた。









隼「お互いに、 "求められるもの" を賭けるってことでどうかな？」









彼の唇が、私の耳のすぐ傍で動く。揺れる。
普段とは違う言葉のトーンに思わず、私は王冠のピアスを揺らす。
いや、揺らしてしまう。
ここでは、動揺はご法度。



左耳に感じる金属を、隼はまじまじと見て、それから、舌を出す。
そのままなぞられる唇は、私の何かを見透かしている。
見透かされている。









隼「俺、Aちゃんの "過去" が知りたいなあ」


A「？！」









そして、次に、こうも言った。









隼「Aちゃんが勝ったら……
　 俺がどうして "いつも笑顔" なのか、教えてあげてもいいよ」









じとりと私を見下ろすその隼の顔は、今まで見たことのない顔だ。
その顔は、腹黒くて、狡猾(こうかつ)で、なんて怖い。




‥

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