CROWN No.98 ページ48
‥
A「……相田さん……」
相田さんにお願いして、 "彼ら" 以外の人に刑務所まで送り戻してもらおうかと思った……だけど、相田さんを呼ぶ手段はない。
連絡機器がないし、その他知ってる人もいない。
編み込みのオープントゥが、走り過ぎで足を痛めつける。
この時期は、よく雨が降る。
中秋の名月を見れたことが奇跡だと言えるくらいに。
入り口には
帰ることができない、と解って、途端に恥ずかしくなる。
だから、人気のない建物の裏に回る。
上向きに、照明が自由に首を回す。
その先に1歩出れば、海に落ちてしまう。
海の傍の、大都会。
俗世と表裏一体、欲望が混沌する箱の外。
──間違い、だったなあ
地面に埋め込まれているライトの傍に、腰を下ろす。
眼下すぐの黒い水を見つめた後、空を見上げる。
星は、見えない。
……どうやって帰ろうか。
着替えたツナギは刑務所に予備があるだろうし所持品があったわけでもないから、飛び出してきたことに後悔はない。
この2日で、大体のルートは解った。
『脱走する意志はない』と、どうにかして伝えないといけないけれど。
A「……」
まだ、混乱してる。
私が初日、あんな行動なんてしなかったら、 "彼ら" の目に留まることはなかったんだろう。
"GENERATIONS" についても、このパーティーが開かれている事実もよく理解できない。
それに、自分は一生関わることはないと思っていた世界。
どうして、こんな形で、囚人と言う自分の罪に反省すべき立場に立ってから関わってしまったのだろう。
どう整理したらいいか判らないこの気持ち。
塗り潰されたような黒い空を見上げる。
そのまましばらくぼうっとしていた。
脱走したと勘違いされたから後々面倒だから、帰ろうにも帰れない。
A「…………っふ……」
喉に、違和感。
何とも言えない感情がこみ上げて、思わず片手で口を塞ぐ。
薄着だから、アスファルトの上で折りたたんだ脚を囲う腕の力が強くなる。
少し、風も出てきた。
何で、泣いているんだろう。
私は今、 "彼ら" に対してどんな感情を持っているんだろう。
少しずつ溶けていた緊張感。
少しずつ見えていた彼らとの信頼感。
それが今、自分の中でぱっとリセットされてしまって。
「……何泣いてんの?」
後ろから聞こえたその声にも、一瞬気づかなかった。
‥
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な - 昨日見つけてここまですぐ読んでしまいました!凄くみんなの過去が気になって惹き込まれます!!!これからも応援しています! オチは裕太くんか隼くん希望です! (2018年3月5日 12時) (レス) id: f0e5b106b0 (このIDを非表示/違反報告)
ぐっちー(プロフ) - いつも見ています!主人公の過去が気になって、いつもドキドキしながら見てます!これからも頑張ってください!応援してます! (2018年1月25日 19時) (レス) id: 900406c4cd (このIDを非表示/違反報告)
星華(プロフ) - 初めまして!楽しく読ませていただいています。オチは誰でもいい気がしてきました笑頑張ってください! (2018年1月25日 18時) (レス) id: f0eebf7f9c (このIDを非表示/違反報告)
和佳奈(プロフ) - これからどんな風になるのかどんな過去があるのかすごい気になります!!オチは龍友がいいです!これからも頑張ってください! (2018年1月25日 2時) (レス) id: 74371510d3 (このIDを非表示/違反報告)
ぴよ(プロフ) - いつも楽しく読ませてもらってます!前にオチは亜嵐くんがいいって言ったんですけど、読めば読むほどどのメンバーのオチも気になって仕方がないです笑 でも1人にしぼるなら亜嵐くんで! 大変だと思いますが、頑張ってください!応援してます!! (2018年1月23日 11時) (レス) id: fea3c16bd8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Kyoh. | 作成日時:2017年11月12日 20時