今日、母親始めます【BL×オリジナル】 (ページ23)

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23部屋目ページ23

「……18年近く前か、子供を養子に出したのは。そん時、丁度相手が亡くなってな……」

律さんは椅子に腰掛け、ポツポツと話し始めた。彼の妻──保持者らしい──が亡くなり、1人で子供を育てながらこの仕事をしていたが、無理だと判断したこと、生後4ヶ月程の子供をある夫婦に託したこと、すべてを聞いた。

「……まぁ、手紙や写真が来てたから、そこまで寂しいとかは無かったんだが……、後悔ばかりしたな。手放してからようやく気づくんだよ。我が子がほんとに可愛いもんだって」

それを聞き、俺は視線を下に移した。

「……お前がどうするかはお前が決めることだ。だが、俺みたいに後悔しないほうを選べ」

彼の言葉に頷き、そっとベッドを降り、部屋を出ていく。
部屋を出る前になにか聞こえたような気がしたが、気のせいだろう。

「……はぁ、話すんじゃなかったか。後から言い出しにくい雰囲気作った俺が憎い……」

後悔しないほうを選べ、なんて俺が言えたことではないと分かっているが、自分の子供には同じ思いをさせたくなかった。
白衣のポケットにしまっているカードケースのネームプレート裏に一緒に入れている律歌の写真を眺めながらため息をつく。

「……あんなチビっちゃかったのに、すっかり母親らしい顔をして、ほんと……アイツにそっくりだ」