【アイナナ】天使vs天使、じゃないの？？【九条天】 (ページ41)

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80：気づけなかったことページ41

ユウリに付き添って一緒に救急車に乗ったAを追いかけて、天も病院に着いた。
廊下の長椅子にAが座っているのを見つけて駆け寄る。

「彼女は？」
「まだ、わかりません」

Aが医者から聞いた話では、ユウリはどうやら入院先の病院から内緒で逃げ出したらしく、外出できるような状態ではなかったという。無理をしたせいで、体調が悪化したのか。いつから入院していたのかわからないが、ユウリが急に来なくなったのもこのことが関係しているのは確かだろう。

「知りませんでした」

Aが知らなくても当然だ。ユウリはいつもへらへらと笑っていて、その笑顔が本物なのか偽物なのか、だれにもわからなかった。体調不良で留年した、と言っていたが、ユウリにとって周りの人が離れていくことが、病気よりも怖いことだったのかもしれない。だからAと音葉に心配をかけたくなかった。

Aが震えている。一人にするわけにはいかない。
天はAの隣に座って、ただそばにいることしかできなかった。

―――― ―――― ―――― ――――

ユウリの意識が戻ったところで、Aは自宅に帰ってきた。

Aは家に帰ってもじっとしていられなかった。ユウリのことを何も知らなかった自分に嫌気がさ
す。友達をこんなに無理させていたと知って、自分に対する怒りがおさまらなかった。

今日、マネージャーから伝えられた、ライブ中止の話。まだ事務所内だけの話だったはずだが、ファンの様子が気になって、スマホをとりだす。ネットでアイラビットについて検索すると、単独ライブを楽しみにする声とともに、気になる記事がでてきた。

「っ」

ページを開いた瞬間、Aの息が止まる。

「なにこれ」

そこには音葉の名前が書いてあった。
気になって音葉のことを調べると、さらにいろいろな記事がでてきた。
Aにとってはもう当たり前のことだった。でもファンにとっては違った。

Aはいてもたってもいられなくなり、慌てて音葉に電話をかけた。でてくれる自信はなかった。