【アイナナ】天使vs天使、じゃないの？？【九条天】 (ページ31)

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70：声が届く場所ページ31

暗闇から無事抜け出した。
部屋からでるまで彼女の手を引いていた天も、電気をつけたと同時にAの手を離した。

衣装部屋の外に出て、一息つく。
明るいところでAの顔を見て、暗闇でよかった、と思った。

「これに懲りたら簡単に人を信じないこと」

しっかりと言い聞かせると、Aはなんのことだかわからない、といった顔をした。きっと騙されたことにも気づいていない。親切な人に言われてのこのこ歩いて行ったら、たまたま部屋の電気が消えた、としか思っていない。

「むずかしいです」

Aにとってはだいぶ難問だろう。
純粋なのは良いところもあるが、悪いことに巻き込まれることも同じくらいある。

「何かあったらここに連絡して」

またこんなことに巻き込まれたとき、天がそばにいるとは限らないので連絡先を教えた。Aは番号を受け取ってじっとそれを見つめている。

「キミのも教えてくれる？」

このままでは話が進まないので天が問いかけると、Aは小さく頷いた。その場でAの連絡先を登録すると、不安が一つ消えた気がした。これでAといつでも連絡をとれる。

「そういえば、あれから電話したの？」

音葉に電話をするように言ってから顔を合わせていなかったので、天はその後のことを知らない。アイラビットは元に戻ったのだろうか。

「わたしの声は、とどきませんでした」

Aの答えに、事態がだいぶ深刻であることがわかった。
ユウリのときのようにはいかないようだ。

天はAの魔法使いではない。仲間を呼び戻すことなんてできない。
それでもAを笑顔にしてあげたかった。