【アイナナ】天使vs天使、じゃないの？？【九条天】 (ページ26)

今日:1 hit、昨日:3 hit、合計:92,638 hit

65：すれ違うページ26

ソファの上に二人分の体重がかかる。

彼女の足の間に自分の膝を入れて逃げられないように固定した。
そのまま片手をAの顔の横に置く。

Aは何が起こっているのかまるで理解できていないようだった。泣き出すかと思ったが、そこまで状況を理解できていない。無理やり手をつないでみたが、Aはされるがままだった。

「こわくないの」
「こわい、です」

答えたAはまっすぐ天を見上げてきた。

「じゃあ逃げたら？抵抗ぐらいできるでしょ」
「こわい、です」

そこで何かがおかしい、と思った。
Aは何をこわいと思っている？

「どうしたら、戻ってきますか」

Aがそう口にしたのを聞いて、彼女がまったく違うことを考えていると気づいた。

天のことなんて見ていない。
前もそうだった。急に、つらい、と言ってきて、何事かと思ったらユウリのことだった。

どうやらAは一つ悩みを抱えると、そのことしか考えられなくなるようだ。
男に押し倒されても気にならないレベルで。
急に現実に戻された気分になる。

「今度はどうしたの」

思わずため息を吐く。体を起こそうとしたが、Aは手を離さなかった。
手をつないだまま彼女を引き寄せると、何もなかったかのように体を起こす。
警戒しているのか、無防備なのか、よくわからなくて不安になる。