第5話 ページ9
【健人目線】
Aが記憶喪失かもしれない。
菊池が帰ってから、俺は病室に戻り両親に伝えた。
2人とも勿論驚いた顔をしてAを見て、Aは「？」と頭に浮かべて俺らを見ている。
この後、お医者さんにAの記憶の事を話せば、やはり一部の記憶が事故のショックで失われてしまっているようだ。
それでも、なんでよりによって、菊池と付き合っている事を…。
「おにーちゃん？」
「……」
「…おにーちゃーん」
「えっ、あっ…。なに、どした？どっか痛くなった？」
「んーん？お兄ちゃん、なんか辛そうな顔してるから」
「…あぁ。大丈夫」
心配そうな顔をしてるAを見て、俺はAの頭をポンポンと撫でる。
Aは「やめて、恥ずかしい」なんて言いながらも、満更でもない顔をしていた。
「お兄ちゃん明日もお仕事じゃないの？帰らなくて大丈夫？」
「あー…、そうね。ありがと。また明日来るから」
「うん。おやすみなさい」
「おやすみ、A」
Aに手を振って、両親にAの事を任せて、俺は病室を出た。
*
案の定、家に帰って寝る準備を済ませてベッドの中に入るが、眠りにつくことは出来なかった。
殆ど寝ないまま朝を迎えてしまい、仕事場へと向かう。
午前中はバラエティ番組の収録、そして午後はメンバーたちと雑誌の写真撮影。
撮影所につけば、既に4人とも揃っていて、いつものようにワイワイしながら撮影現場に用意されているお菓子をつまんでいた。
「あ、健人君。おはよ」
最初に気付いた勝利が、手をあげると残る3人も「おはよう」と手を振った。
「中島、…」
「あぁ、…うん」
菊池が立ち上がり、こちらにやって来たので、3人と少し距離を置いた場所に移動する。
菊池が帰った後の話をすれば、菊池は静かに頷いてそれを聞く。
「…中島、寝てないだろ」
「あはは……、バレます？」
「何年一緒にいると思ってんの」
俺の顔を見て、はぁと溜め息を吐いて肩を落とす菊池。
さすが10年以上一緒にいるだけあるな、なんて思いながら、菊池の表情を見て俺も苦笑いを浮かべる。
「そういう菊池も。寝てないじゃん」
「………バレた？」
「バレバレ。…まぁ、そうだよな。寝れないよな…」
「今日はメイクさんに頑張ってもらうしかないわ」
.
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作者名：ルイ | 作成日時：2019年5月26日 20時
