第16話 ページ29
【A目線】
お兄ちゃんに言ってしまった。
私は風磨君が好きだと。
「……そりゃ、驚くよね。同じグループのメンバーで、しかもお兄ちゃんとはシンメだもん…」
お兄ちゃんがジャニーズに入ってから、ずっと一緒だった風磨君。
そんな彼の事を好きになったと妹に言われたら、驚くに決まってる。
溜め息をついて、そっと引き出しから指輪を手に取る。
入院した時から嵌めていたアメジストの宝石がついた指輪。
自分で買った記憶はないけれど、お兄ちゃんからもらった記憶も曖昧なこの指輪。
ただ、風磨君のメンカラだったな、なんて思い出して、久し振りに見たくなっていて、そっと右手の薬指に嵌める。
窓からの光にキラリと宝石が輝いて、より一層綺麗な紫色になる。
「……綺麗」
ポツリ、と呟いて宝石を見つめれば、もう一度キラリと輝いて、その眩しさに思わず目を瞑る。
同時にズキンと頭の奥の方が痛くなり、思わずこめかみ部分に手を添えた。
『Aちゃん。俺、回りくどい言い方とか出来ないからさ。もう言わせてもらうけど、俺はAちゃんの事大好きだよ。勿論、1人の女性として』
私達以外誰もいない静かな海辺。
キラキラする夕焼けをバックに、彼は私を見てそう言った。
「………え?なに、今の…」
はっと我に返り、目の前は勿論見慣れた病室。
私を好きだと告白していた彼は、風磨君。
私が勝手に妄想してしまったのだろうか。
でも、どこか懐かしい感じがして、頭の中が混乱していくのがわかる。
「私……、風磨君と」
付き合っていた?
私と風磨君が?
何故、記憶が無いのだろうか。
私はあの事故のあった日、一部の記憶を失っていたというわけなのだろうか。
「……わかんない。…わかんないよ………」
訳がわからない状態に、頭はついていかなくて、気付いたらボロボロと涙が溢れていた。
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作者名:ルイ | 作成日時:2019年5月26日 20時