第13話 ページ25
「…何が見たい?どれも割とすぐ始まるタイミングみたいだけど」
「そうですね〜……」
うーん、と考えながらも、Aは見たいものが決まっているようで、ジッと1つのタイトルを見つめていた。
「…ホラー映画でしょ?」
「えっ、…なんでわかったんですか」
「ほら、俺、Aちゃんのエスパーだから」
「……なるほど」
そこまで納得されると、改めて本当にAってピュアなんだなと思ってしまう。
映画のチケットを購入した時には既に見る映画の入場案内が始まっていて、俺らはすぐに指定のスクリーンの部屋に向かった。
「……なんか、見覚えある気がする…」
「………」
ぽつり、と呟かれたその言葉はしっかりと俺の耳に届いていたが、なんて反応したら良いかわからずに、聞こえなかったふりをする。
チケットを取ったのは、一番後ろの座席で、Aと一緒に一番後ろまで足早に進んで席に座る。
平日の昼過ぎという事もあって、空いている席も少なくはない。
席に座ればすぐに映画が始まって、俺たちは静かにスクリーンを見つめる。
ストーリーが進むにつれて、怖いシーンもどんどんと増えていくと、ちらとAを見るとAと目が合う。
「……怖い?いいよ、手握ってて」
ホラー映画が好きな癖に、結局毎回怖がって俺の手を握っていたAの姿を思い出して、そっと手を差し出す。
Aはすぐに俺の手を握って、ふにゃと笑顔を浮かべて、またスクリーンを見つめた。
(あぁ………、やっぱ、好きだわ)
ぎゅ、と握られる手を、しっかりと握り返せば、Aの手の温もりに思わず頬が緩んでしまう。
その後は、半分くらい映画には集中できないまま、気付いたらエンディングが流れていて、明るくなるのと同時にAの手はそっと離れていってしまった。
ただ、Aの表情がどこか浮かない表情だったのは、映画の所為だったのだろうか。
ふと疑問に思ってしまったが、声を掛けることは出来ずに俺たちは映画館を後にした。
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作者名:ルイ | 作成日時:2019年5月26日 20時