「夜間飛行」 ページ41
次の日、また仕事をこなして帰路につく。
いつもだったらタクシー乗ってるとこだけど、何となく歩きたい気分だったので、少し遅くなる旨をMちゃんに連絡して夜の街を歩く。
ふと右手に目を向けると、バスケットゴールらしきものが目に入った。
こんなとこにストリートコートなんかあったっけ、と思いつつ、昨日黄瀬がバスケ部に入ったと話していたことを思い出す。
桃井といい黄瀬といい、私のまわりバスケ部多くない?
……そういや黒子もバスケ部だったっけ。
あまりにもそれっぽくないから忘れそうになるけど。
私自身もバスケはそこそこ好きだ。
死ぬほどやらされてた習い事の中で唯一私が楽しみにしていたのがミニバスだった。
ボール持ってないと意味がないとわかっていつつも、懐かしさにコートに足を踏み入れれば、バシュ、とボールがネットを潜る音。
ヤバい先客がいた、と気まずさに立ち去ろうとしたけど、そこにいたのは何度見ても見慣れない水色。
落ちてくるボールを取りにこちら側へ駆け寄ってくるところで、あっちも私に気付いたらしかった。
「こんばんは、Aさん」
「……ストーカー?」
「失礼ですね。先にいたのは僕の方ですよ」
黒子は淡々と「ただの偶然です」と言ってボールを拾う。
……それにしたってエンカウント率が高すぎると思う。
「それか運命かもしれませんね」という相も変わらずふざけた言葉が聞こえたので文句を言おうと顔を上げれば、発言の主はシュートモーションに入っていた。
綺麗な姿勢から放たれたボールはさっきと同じようにリングに吸い込まれていく。
やっぱりそれっぽくなくてもこいつはバスケ部なんだな、と思いつつ黒子を振り返れば、何故か不満気な表情で頭を傾げていた。
「……なに、ゴールしちゃ駄目なの?」
「まぁ、はい。そうですね」
「は?」
「一応これ、シュート外す練習なので」
「…………はぁ??」
意味が分からない。
バスケがボールをゴールに入れてその点数を競うスポーツだってことは、バスケ経験のない人間だって知ってることだと思う。
そんな中で「シュートを外す」練習をするなんて人は、何かしらの目的がなければただシンプルに頭がヤバい奴だろう。
……黒子がシンプルに頭がヤバい奴である可能性は否定できないけど。
訝しげな顔の私に黒子は何故か少し笑って、「この間、家業の話したじゃないですか。それのせいで僕、目立っちゃ駄目なんですよ」と肩を落とした。
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水団子(プロフ) - 歌柚さん» 話の展開を褒めて頂き光栄です、、!!!拙い文に亀更新で申しわけありませんが、楽しんで頂けると嬉しいです!コメントありがとうございました! (2021年8月31日 3時) (レス) id: 4f5e2162c5 (このIDを非表示/違反報告)
水団子(プロフ) - 光華さん» めちゃくちゃ嬉しいです、、恐ろしい程更新が遅いですが、最後までお付き合い頂ければ幸いです。コメントありがとうございました! (2021年8月31日 3時) (レス) id: 4f5e2162c5 (このIDを非表示/違反報告)
歌柚 - コメント失礼します。ストーリや話の展開が面白くて楽しく見させてもらってます!ストーリ更新楽しみに待ってます!! (2021年7月13日 21時) (レス) id: f33fb75788 (このIDを非表示/違反報告)
光華(プロフ) - 好きです!更新応援してます! (2021年5月16日 10時) (レス) id: a571740452 (このIDを非表示/違反報告)
水団子(プロフ) - よもぎお餅さん» 黒子くんのお家に行こうと尾行したら見失った、というエピソードが好きでそこから色々と捏造を重ねたらこんな黒子くんが出来上がりました(^-^)主人公らしからぬミステリアスさが魅力だと思っています!コメントありがとうございました!! (2019年6月19日 20時) (レス) id: f26d4bb807 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:水団子 | 作成日時:2016年9月16日 0時