てめぇとなら

３０．じーっ ページ30

「んー……」



　ゼンが椅子に座り、一枚の紙と向き合っている。



　その紙は小さなマス目があり、ゼンは定規やコンパスを取り出していた。



　頭の中にあるアイデアを粗方形にしていく作業。



　わくわくするような、難しいような。



「ゼン様、お茶をお持ちしました」


「ああ、センキュー」



　ここは人気の売れっ子がいる制作室。


　

　温度、湿度は何も問題がない。

　


　それに、スイッチをいれれば空気清浄機も使える。



　のだが、やはり喉を労わるものはいる。



「あー、ここをもう少し高くした方がいいのかも」


「アイデアは固まっているのですか？」


「ある程度はな。ってか、前々からパソコンにアイデアみたいなのはストックしててさ。


　それをためる一方なのも嫌だからそろそろ形にしようかと思って、適当なの選んだ」



「それは書類審査はいらないのです？」


「んー、売れっ子になってくると好き放題できるんだけども、俺の場合はリエのチェック入るかな。


　変なアイデア出してくんなーって。


　俺が他人のこと考えないんじゃなくて、妙なところに着眼点あてちゃうからだと思うんだけど」


「はあ、ゼン様は少々難ありなのでございますね。


　それで、今回はどんな新作なのです？」



「俺が今書いてるのはコーヒーメーカーみたいなやつ。


　お湯とコーヒー豆いれて作るのは変わらないんだけど、その人の健康状態とかみてくれたり


　あとはコーヒー味のパウダー作ってくれたり？ 俺の願望がつまってんなー、これは。


　接待とかたまにあるんだけど、ふりかけたらコーヒー味になるもの持ち歩けたらなーっていう地味な願望よ」



「ゼン様はコーヒーが好きなんですね」


「ショートケーキ出されても食べられないこと多くてさー。


　でもよそ様の前でそれするとマナー違反だからケースバイケースだな。


　お土産とかで渡されてひとりで食べるときのみか」


「どうでもいいですが私はショートケーキには紅茶一択です」


「へー、ロボットでも味覚あるのか」



「優秀なロボットですから」

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