てめぇとなら

１４．ゼンはどうするの ページ14

ラーメンは東洋にある、ホウチェンという大都市が発祥だとされている麵料理だ。リエとゼンが住むビルドーにはパスタ等の麺料理もあるけれど、スープにつかっていて、あったまることが出来るのはラーメンだけだ。


　おっさんが湯切りをしてくれた麺を、スープの中にゆっくりと入れる。その上からきくらげ、チャーシュー、青ネギ、水菜、なると、コーンをふんだんにのせてくれる。本当は三種類ぐらいをのせるのが一番良いんだろうけど、空腹であるリエとゼンにとってはあればあるだけ良い。




「はいよ、お待ちどお」
「ありがとう」




　二人はラーメンを受け取って、割り箸をぱちんっと割った。ビルドーはフォークとナイフが主流になっているのだが、二人はラーメンが好きでここに来ることが多く、お箸のつかい方をマスターしてしまった。店主とも顔馴染みである。




「おっさん、今日は味薄いねー。どうしたの？」
「夜遅いと、味濃いものは体に毒だろうっ？」
「あー、なるほどね。やっさしー」



　リエはれんげでスープを一口分すくい、ズズッと音をたてて飲んだ。
　醤油ラーメンを頼んだゼンもスープを飲んで、ほっと一息。




「二人さん、今日も残業かい？」



　店主のその質問に対し、何故かリエは胸を張って答えた。




「ああ、なんていうか。ほら、ファーフ・オークションマンケットの目玉って私の部下であるゼンでしょう？」
「うわー、俺年下から部下って言われてるー」
「目玉商品は、宣伝用に前々からアピールしなくちゃならないのよ。だから、ゼンにはいつも早く作ってもらってるの」
「なるほどねぇ」



　リエは感謝しなさいよ風な目をゼンに向けた。ゼンが自由に商品を制作できているのもリエのおかげだし、ここまでやってこれたのもリエが頑張ったからだとも言える。




「それで、もう商品は出来上がったんだろう？ ゼンはどうするの。休暇？」
「俺は新作の設計とかしなきゃならねーんで。部品取り寄せたりっスかね」
「じゃあ、いつ休暇とるの。ずっと働きづめでいる気？」



　ゼンはチラッと、尖った視線をリエに向けた。


　ゼンのシフトを組んでいるのはリエである。リエは冷や汗を流し、気にしていない素振りを努めながらお椀を持ち上げて、直接口をつけてスープを飲んだ。

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