2 ページ6
流星side
それももう、今では感覚だけで結べる。
鏡の前でジャケットの襟をただした。
大丈夫、何もおかしくない。
冷えてしまったマグカップ片手にリビングに降りればお母さんがもう起きとった。
軽く挨拶をしてトキくんのとこへ向かう。
「トキくんおはよ」
可愛い猫が描かれた器にトキくんのご飯を入れていつもの場所へ置けばソロソロと近寄って来る。
おでこを指の背で撫でてあげれば気持ちよさそうに目を細めた。
パシャリとそんな可愛い姿をカメラに収めてお母さんが用意してくれた朝ごはんを食べる。
自分が食べ終わる頃にはトキくんも終わってたから器を回収してトキくんを胡座をかいた足で囲い込む。
そうすれば太腿に顎を置いて寝る体制に入ってしまった。
またパシャリ。
そして記念に、とお母さんに制服の俺とトキくんのツーショットを撮ってもらった。
部屋に戻って鞄を手に取る。
教科書もほとんど置いてたし、筆箱も胸ポケットにあるペンで間に合うから持っていってなかった。
やからいつも軽くて、レッスンに必要なものしか入ってなかった鞄。
それでも3年間使えば相応にくたびれている。
そんな鞄を肩に下げ、靴を履く。
「行ってきます」
お見送りに来てくれたお母さんとトキくんにそう告げてバス停に向かう。
いつもギリギリに家を出てたから走ってばっかりやったけど今日はゆっくり歩く。
これからも使う道やけど、制服で通るのは最後。
ひとつひとつ、目に焼き付けながらゆっくりとバス停を目指した。
いつもよりひとつ早いバスに乗り、駅で電車に乗り換えて。
1時間ぐらい揺られれば何度も通った学校。
もう何人も同級生が来ていて、おはよと挨拶を交わした。
みんなで教室で騒いでいるうちにあっという間に体育館に移動せなあかん時間になった。
椅子に座って、お偉いさんたちの長い話を聞いて。
ちょっと眠かったけど、最後やから頑張ったんやで？
拍手を送られながらまた教室に戻れば、3年間お世話になった先生の話を聞く。
それが終わればみんなで写真を撮って、解散。
人生最後の卒業式は随分と呆気なく終わった。
それでも、3年間の思い出は消えへん。
こわい先生で嫌々言うてた数学も、声が優しくて毎回寝てしもてた古典も。
みんなで全力で戦った体育も。
なんやかんや、振り返ってみれば楽しかった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 265人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「なにわ男子」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぽん(プロフ) - 更新楽しみにしています！ (2020年10月1日 16時) (
レス) id: 8bb0c991f7 (このIDを非表示/違反報告)
あぁちゃん(プロフ) - ちびりゅシリーズもこちらもクオリティ高くて文章や表現とても大好きです。大西流星くんの作品まだまだ期待しています。DMもさせて頂きました。よろしくお願いします (2020年4月17日 23時) (レス) id: 6731409e27 (このIDを非表示/違反報告)
ロン太(プロフ) - Fujitanatsuki14さん» ありがとうございます(^^) (2020年2月29日 20時) (レス) id: e6d2555a07 (このIDを非表示/違反報告)
Fujitanatsuki14(プロフ) - Twitterでdm送らせていただきました。 (2020年2月27日 15時) (レス) id: ba06389b28 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ロン太 | 作成日時：2020年2月19日 21時
