愛囁 03 ページ3
*
「A〜〜！帽子直してくれよ！！」
「またか...大事だもんだっつー癖によく引っ掛けるよなお前」
今日のサニー号はいつもより少し騒がしい。
ウソップやチョッパーたちと遊んでいたらしいルフィが帽子をどこかに引っ掛けたらしく、泣きながらおれの所へやってきた。
以前はナミに治して貰っていたのだが、航海士の彼女にもやることは沢山あるというので。暇で裁縫が出来る自分に役が回ってきたというわけだ。
「20分もすりゃあ直るさ。それまでジュースでも飲んでろよ」
「いや〜〜お前オカマなのに器用だよな！助かるよ！」
「オカマじゃねーから」
オカマとオナベの違いも分かっていない船長に呆れながらキッチンへの扉を開ける。それと同時に肉を焼いたときの香ばしい薫りが忽ち薫ってきた。
隣のルフィはすでに涎をダラダラ滴ながら席に着いている。全くゲンキンな奴だ...
「ルフィ、それは晩飯だろ。ジュース飲んどけって言ったよな」
「この匂い嗅いじまうと腹減るだろ！なぁ〜〜〜サンジぃ〜〜」
「黙れクソゴム。Aちゃんの言うとおりジュースで我慢しやがれ」
ルフィは甘えるようにサンジを呼ぶが、呆気なくそれは拒否されてルフィの前にオレンジジュースが置かれる。
私はキッチンに置いてあるソーイングセットを広げて麦わら帽子の修繕手術を開始した。
サンジは夕飯を作り終えると、隣でじっと此方の手元を見てきたルフィと一緒になって椅子に座り観察してくる
こう...真剣な目で見られると緊張するもんだな...
珍しく目がハートじゃないサンジの視線が自分の手元に注がれている。それが何だかこっ恥ずかしくなって、おれは"オイ"と声を出した。
「あぁ...すまねェ、邪魔だったよな」
「いや、別にそんなんじゃねェけど...あんまり見られると緊張して手元が狂うっつーか...」
サンジは申し訳なさそうに眉を下げる。何か此方が申し訳なくなって言い訳を考えるけど、どうにもいつも通りにいかない。
変に意識するからダメなんだ。
ただ裁縫が興味深くて見てただけだろ...
そうやって彼のいつもと違った真剣な眼差しに変に緊張している自分を制する。
「Aちゃんの手が、あまりにも綺麗で見入ってた。陶器みたいに綺麗なんだね」
ほら、お前がまたそういうことばかり言うから...おれは中途半端な奴になっちまうんだよ。
煩く鳴る心臓を抑えて、おれはまたサンジの甘い言葉から逃げるように目を逸らした
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作者名：RIOT(別垢にいみ)
| 作成日時：2019年12月9日 0時
