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いつかは、って、勝手にそう描いてた。
「部長って本当優しいですよねえ…
なんで彼女つくらないんですか?モテるのに」
「ご想像にお任せしますよ」
「ええ、なんですかそれー」
相談があるから、なんて言われて来た居酒屋。
相談という相談もなく、一時間が過ぎた頃。
名前で呼んでほしいというお願いに呆れていた。
そんな、一時間が過ぎたとき。
彼女の言葉に思い浮かぶのは、たった一人。
黒瀬しか、いなかった。
「…私じゃ、だめですか?」
「部長は、…部長の好きな人は。
黒瀬ちゃんじゃないと、どうしてもだめなんですか」
泣きそうな顔。
この顔に弱いことを、知られているんだろうか。
いつか、振り向いてくれるんじゃないかって。
付き合って、結婚して、家庭に入ってもらって。
そんな馬鹿馬鹿しい未来予想図を描かせてしまうから恋は怖いものだ。
「…どうでしょうね」
いつの間にか好きになってた。
仕事熱心で、自分の綺麗さに気づかないほど鈍感で。
クールかと思えば女の子らしいところもあって。
誰にでも平等な優しさと、はにかんだ笑顔に。
いつの間にか、恋に落ちていた。
「もうお開きにしましょうか。
タクシー呼びましょ?酔いすぎですよ」
「…ずるい」
「っ、」
至近距離で見つめられても、肩に手をおかれても。
酔いすぎですって。
その一言で笑って終わらせてしまう自分は、最低?
「……そうですね、ちょっと飲みすぎました」
彼女の悲しそうな顔を見ても、頭に浮かぶのは、黒瀬ただ一人だけ。
″重岡さんのこと、好きかもしれない″
よくある話なのか。
自分の知り合いを好きだと言った彼女はもうきっと、その知り合いに振り向くことなんてない。
「………はあ、」
タクシーを見送って車へ戻る。
柄にもなく、泣きそうになった。
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