第二章 ページ36
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「はあ!?」
『ちょ、うるさい…』
「あの!重岡くんを!振ったの!?」
『…いや、振ったわけじゃ、』
「え、なに考えてんの?」
『そこまで言う?』
普通に電話してるはずなのに、なぜかスピーカーの音並みの大きさ。
夜になに叫んでるのさ。
家から音漏れてたらどうすんの。
「言っとくけど、彼奴ら重ねちゃダメだからね?」
『分かってるよ』
「まあ、それは私にも言えないから強くは言わない。
でも重岡くんの気持ちも考えな」
『ですよね…』
「キス受け入れたのに返事は保留って軽く見られても仕方ないことしてるんだから」
『う、…』
こういうときだけは逆転する立場。
実紅はなぜか私のこととなると正論しか言わない。
それもそれで困る。
反論できない。…するつもりもないんだけど。
無意識に唇に触れた手。
別に初めてじゃない。
高校時代の忘れたいファーストキスだって覚えてる。
なのに、特別感で溢れてて。
感触も息遣いも、全部鮮明に覚えてる。
「A?おーい」
『あ、ごめん、なに?』
「だーかーら、仕事どうすんの?って」
『あー…』
仕事のことと、重岡さんとのこと。
ごちゃ混ぜになって、枯れそうにない涙に変わって。
後悔するのが一番つらい。
『ごめん、もう切るね』
「…分かった。おやすみ」
『うん、おやすみ』
閉じそうになる目を擦る。
切れた電話と同じように、泣き疲れて意識がぷつんと切れた。
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