検索窓
今日:2 hit、昨日:2 hit、合計:111,579 hit

#34 ページ34

.






「わ、ブランコとかめっちゃ懐かしいわ」





Aも座ろうや、なんて子どもみたいにはしゃいで早く早くと私を手招きする。

離れた手が寂しくなったのは、言えないけど。

こうやって話を聞こうとしてくれるところも、上手く言えないけど、好きなんだ。





「言えへんかったらええよ?無理せんくても」





覗き込むように、でも優しくそんなこと言われたら、せっかく止まっていた涙がまた溢れ出す。


あたふたする重岡さんに申し訳ないと思いつつ涙声で今日あったことを話した。





『初めての仕事なのに、こんなことになって…
もう、どうしたら、いいかっ、』





うんうんと頷いてくれる優しさも、今の私には多分、逆効果。

余計に、包まれた感じがする。





「そっかそっか。
俺はその、デザイン?とか分からんけど、真似されてしかも疑惑かけられるってなあ…」

「まあ、ポジティブに考えすぎてもあれやろうけど、それだけAの才能もあるんちゃう?
なんかこう、あるやん」





ちょっとしたことやけど、気づく人っているやん。


あれや、なんやっけ中距離…なんとか?

あれも遠距離を中距離に変えただけやん。
でもネーミングセンスあるやろ。


なんやろ、小説家とか、脚本家とか、なんかその他もいろいろあるけど。

ああ、そう考えればよかったんやって思わせる人って俺らもそうやけど、結構な刺激やねんで。


やから考えすぎんでもええんちゃうかな。





「って、なんもアドバイスになってへんくて、なんかごめんな?」

『いえ、楽になりました』

「そう?ほんならよかったわ」





恋も仕事も上手くいかない。

そう思い始めてたけど、それを救うのは、いつだって重岡さん。


すごいな。私もあんな人になりたいな。





「よし、帰ろか。送るから」

『え、でも重岡さんが、』

「俺は大丈夫やって。
女の人やねんから男に守らして?」

『…はい』





立ち上がった彼に続いて私も立ち上がる。


カチャンと音を立てて寂しく揺れたブランコがなぜか私みたいに思えた。





『重岡さん』

「ん?……え、」

『ごめんなさい…
今日だけ、今日だけでいいから、繋ぎたい』

「…ええよ」





きゅっと絡まった指は、やっぱり不完全なままの形。

絡まったせいで近くなった距離に、心臓の音を抑えるのが精一杯だった。

#35→←#33



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (106 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
362人がお気に入り
設定タグ:ジャニーズWEST , 重岡大毅 , 中間淳太   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:凜憧 | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2019年5月9日 17時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。