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「どう?上手くいってる?」
『あ、はい!
でもここの明るさと色合いをどうしようかなって…』
「んー、ここは暗い方がいいんじゃないかな。
全体的に明るめだし、色落としてもいいと思うよ」
『こう、ですか?』
「そうそう。いい感じにまとまってる」
『すみません、ありがとうございます』
「いえいえ」
最初の出会いから数週間。
あのときよりも頻繁に話しかけてくれるようになって私から美代先輩への相談も増えた頃。
最終段階に入った明るさ調整で、珍しく私と先輩では意見が食い違った。
勿論のこと言葉には出さずに賛同したけれど、ここを暗くしたらどう見たって暗いイメージになる。
でも先輩のアドバイスを無駄にするわけには…
一人で悶々とした気持ちを抱えながら最終チェックをしに部長のところへ向かった。
『失礼します』
「どうぞ。順調?」
『…は、い。なんとか。
最終チェックしてもらいに来ました』
「ええよ、見せて」
不安を抱えたまま、コピーした企画の紙を部長の前に差し出した。
机に置かれた自分の企画書を見て今までにない緊張に襲われる。
先輩たちって、こんなことしてるんだ。
そう思うと自然と尊敬の念が湧いてきて。
先輩とは距離を置こうとしていた自分を、今になってとても恨めしく思った。
「…これ、」
そう思ったのも束の間。
最後のデザインの企画書を見た部長の顔が雲った。
やっぱり直した方がよかったかな。
でも先輩のアドバイスは…
抱えていたものが溢れだしそうになって、抑える。
冷静を装って聞ける自分が、少し怖い。
『あの、何か?』
曇っていた顔を上げて、いや…と言葉を濁される。
やっぱり、何かあるんだ。
意を決したように上げられた視線は、交わった瞬間、氷のように冷たく感じた。
「似た企画書出した人が、おってん」
『…え?』
「前半の企画はもちろん違うで?でも、最後の企画、明るさが違うだけで色もほとんど同じやねん」
遠回しに言ってくれてる。
なのに、頭の中は真っ白だった。
『デザインが、被ってる、ってことですか』
自分で声に出しても、正直かなり心にくる。
揺れた瞳を下に向けた部長を見て立ち尽くしたまま、どうすることもできずにいた。
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