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『んー、終わったあ…』
あれからなんとか部長にもOKをもらって、今日中の仕事は全て終わらせられた。
ふと横を見ると、誰もいない。
周りを見渡して気づく。
どうやら時間が大分過ぎていたみたい。
そんな必死だったのか。
誰もいないのをいいことに一人で苦笑いをこぼす。
『…静かだなあ』
どうせなら実紅が来るまで待ってようかな、なんて、置き去りにされたバッグを見て思う。
視界に入る実紅のデスクには、一週間前とは比べ物にならないくらい物が増えた。
膨大な量の資料に気づかなかった自分に、驚くほど。
『あ、実紅』
「A…」
デスクから顔をあげる。
打ち合わせでもしていたのか、顔を出す実紅はやけに疲れ気味。
壁に寄りかかっている実紅の顔色があまりに蒼白で、心配になって駆け寄る。
私を見る瞳は、微かに潤んでいるようにも見えた。
『ちょ、大丈夫?朝よりも顔色悪いよ?』
「大丈夫、すぐ治るよ、」
へらっと笑った実紅。
朝感じた違和感が確信に変わった。
やっぱり、体調悪いんだ。
とりあえず休もう。
そう声をかけようとした瞬間、支えようと回した手にぐっと負荷がかかった。
『え、実紅?』
声をかけてみても反応しない。
倒れたんだと分かるのに、数十秒はかかった。
「黒瀬?こんな時間までなにして…」
『部長、どうしよう、実紅がっ、』
暫く突っ立っていると、最後の見回りが終わったのか部長が帰ってきた。
何も考えられない。
真っ白になった頭で、目の前で起こったことを言葉にしていく。
「そっか、ごめんな、もっと早くに来てやれんくて」
泣きそうな私にそう微笑んで、崩れ落ちそうな実紅を軽々とおぶる。
こんなとき、頼りになる。
そんな人の見本はやっぱり部長だ。
朝、気づいてあげればよかった。
後悔の念に押し潰されそうになる私を察したように、部長が綺麗な手でまた私の頭を撫でた。
「気づかんかった俺にも責任はある。
あんまり自分責めんな」
『っ、でも、』
「黒瀬のせいやないから。
そこまで思うんやったら目覚ますまでついてやって」
『…は、い』
医務室までの道が遠い。
流れた沈黙に、抑えた涙が溢れそうになった。
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